独立と起業のきっかけは?
私の時代は、今の若い方々の建設業の雰囲気とは全く違っていました。昔は「班」というチーム単位で仕事をしていました。独立のきっかけは、時代もあり周りの方々から「もう会社を作らなければダメだ」と言われるようになり、それなら作ろうかという流れでもう30年以上前になりますが独立をしたんです。
家(実家)の生活を支えるため、必死で稼ごうと中学校を卒業してすぐにこの仕事を始めました。卒業して1週間も経たないうちに働きに出ましたね。会社を設立するまでの長い期間、私はずっとこの業種で経験を積んできました。
独立してよかったことは?
多くの苦労を乗り越えて、すべてが良い経験になったと思っています。
特に大きかったのは「人との繋がりの重要性」を体感したことです。若いころから苦い経験を多く味わってきたからこそ、「人は大事にしなければいけない」「人がいないとこの仕事はできない」ということを学びました。この業界では、縁と信用が全てなんです。
独立して大変だったことは?
独立してすぐは、すべてが大変でしたね。特にこの「鳶の仕事」を覚えるのは並大抵のことではありません。昔は本当に常に戦いでした。
先輩も、何も教えてくれなかった時代でした。「自分で覚えろ!」と。病気や怪我の責任もすべて自分持ちでした。資金繰りもギリギリで、朝から晩まで、昼夜通して働くしかなかった。休む暇もなく働いた結果、29歳の時には結核を患い、このままでは命に関わってしまうというところまでいってしまったこともあります。

建設業で起業するメリットとは?
独立のメリットを最初から期待して始めたら、まず続きません。メリットは自分で頑張って乗り越えた先に、後からついてくるものですよ。
ただ建設業、中でもこの鳶の仕事には大きな魅力があるんです。それは「大きな仕事をやり終えた時の達成感」です。我々は大手ゼネコンや商社の仕事で、30階や40階建てのタワーマンション、物流倉庫などの大規模工事も手掛けているでしょう?そんな大きな現場が完成したときの満足感は、本当に大きいもので、この仕事ならではの誇りだと言えますね。
独立して一人前になるまでの目安ですか? それは、どんなに頑張っても最低でも10年以上はかかるでしょう。技術だけではありません。「この人に仕事を任せても大丈夫だ」と信用してもらえるまでには、10年という時間が必要なんです。仕事は簡単なものではありませんからね。
独立を目指す人(若者)に一言
もし将来、「いずれは自分で起業したい」という熱意を持った方が面接に来たら、私はその「頑張りたい」という気持ちを全力で応援しますよ。
具体的にどんなサポートができるかというと、まず独立していざ仕事を始めるとなってもなかなか仕事はもらえませんから、私が親会社やゼネコンの方々に「この子は真面目にやってきた。協力会社として使ってやってほしい。」とご紹介して差し上げます。これが一番の応援です。
それから、この仕事をするには最低でも5つか6つは資格が必要です。もちろん、資格取得を支援する制度をつかうのでしたら「会社で働くため」にという名目で資格を取得していただきますが、それは皆さんの一生の財産になりますからね。私の方から「ぜひ取った方がいいよ」と強く勧めていますよ。それに、独立後に困りがちな経理や事務回りのサポートもできます。私が長年お世話になっている税理士や会計事務所のご紹介など、人脈は惜しみません。
夢を持っておられる求職者の皆さんに一番伝えたいことは、「一生懸命頑張りなさいね」ということだけです。 人のためではなく、自分のために真面目にやるんです。楽な部分、美味しい部分だけを伝えようとは思いません。一生懸命やれば、必ず周りが認めてくれます。
だからと言って自分から道を閉ざすようなことはせず、まずは素直に叶えたい形を教えて欲しいと思います。