1人親方として活躍する上で頭が痛いのが確定申告です。
ややこしい手続きや多くの書類などにわずらわしさを感じる人もいますよね。
そもそも1人親方が確定申告を済ませるには、どのような手続きを踏めばよいのでしょうか?
ここでは1人親方が確定申告をする方法を、必要書類などもふまえながらわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
1人親方の確定申告に必要な書類
この記事では1人親方の確定申告の方法として、以下の2パターンを解説します。
- 青色申告の場合
- 白色申告の場合
それぞれ見ていきましょう。
青色申告の場合
まずは青色申告に必要な書類です。
青色申告は後ほど解説する白色申告と比較すると手続きが煩雑ですが、その分さまざまな控除を受けられる手続きです。
1人親方が青色申告を済ませるには、以下の書類を用意してください。
青色申告に必要な書類
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 青色申告決算書
- 賃貸対照表
- 控除に関連する証明書
それぞれの書類を詳しく解説します。
確定申告書(第一表・第二表)
確定申告書は1人親方の所得金額や収入、自身で計算した税額を記入する書類です。
国税庁のホームページからダウンロードできるので、早めに用意しましょう。
青色申告決算書
青色申告決算書は、3枚の損益計算書および1枚の貸借対照表の合計4枚の書類からなります。
損益計算書には年間や月間の売上額、減価償却費などを記入し、賃貸対照表には資金の調達法や事業にかかったお金の動きなどを記入します。
すべて国税庁のホームページからダウンロード可能です。
控除に関連する証明書
地震保険や生命保険などの控除を受ける際に必要な書類です。
多くの場合はハガキで郵送されるので、紛失しないようしっかり管理してください。
白色申告の場合
続いては白色申告に必要な書類を見てみましょう。
白色申告は青色申告と比べて手続きがシンプルな反面、各種控除が受けられなかったり赤字の繰越ができなかったりといったデメリットがあります。
どちらの申告を選ぶのかよく検討しましょう。
白色申告に必要な書類は以下の通りです。
白色申告に必要な書類
- 確定申告書
- 収支内訳書
確定申告書
白色申告の場合でも、青色申告と同じように確定申告書の記入が必要です。
国税庁のホームページからダウンロードして、早めに記入しましょう。
収支内訳書
収支内訳書は1月1日から12月31日までに発生した経費や売り上げなどを集計し、所得を計算するための書類です。
所得は以下の計算式で求められます。
収支内訳書には「一般用」「農業所得用」「不動産所得用」の3種類があります。
ここでいう「一般」とは営業所による所得がある場合を指します。
ご自身の事業に沿ったものを用意しましょう。
自身での用意が必要な書類
上で解説した書類のほとんどは国税庁のホームページからダウンロードできるものばかりです。
ただし、1人親方が確定申告をする上では自身で用意しなければいけないものもあります。
用意には時間がかかるものもあるので、余裕をもって準備してください。
以下の5つの書類を見てみましょう。
自身での用意が必要な書類
- 会計帳簿
- マイナンバー
- 領収書
- 保険の明細書
- 還付金受け取りの為の口座
順番に解説していきます。
会計帳簿
会計帳簿は毎日の取引内容を記録し、お金の流れや経営の状況を記録するためのものです。
確定申告に必要な書類を記入する際に必要になるので、きちんと記録しておきましょう。
青色申告では「仕訳帳」「現金出納帳」「経費帳」などさまざまな帳簿が必要になり、7年間の保管が義務付けられています。
一方白色申告の場合は、必要経費と収入が明記されている「法廷帳簿」と業務に関して作成した法廷帳簿以外の「任意帳簿」が必要です。
法廷帳簿は7年間、任意帳簿は5年間保管する必要があるので、覚えておきましょう。
マイナンバー
通知カードやマイナンバーが記載されている住民票など、マイナンバーが確認できる書類も必要です。
さらに配偶者控除や扶養控除を申請する際には、控除を受ける対象者のマイナンバーも必要なので、忘れずに用意してください。
一番おすすめなのがマイナンバーカードです。
マイナンバーカードがあれば、国税庁が提供する電子申告システム「e-Tax」をつかって24時間いつでも好きな場所で確定申告を完結させられます。
忙しい合間を縫って税務署に出向く必要がないので、時間の節約になりますよ!
さらに、控除額がアップしたり還付が早くなったりとメリットが多いです。
もちろん、税務署の手続きでもマイナンバーカードは使えます。
税務署の職員に手続き方法などを確認しながら申告したい場合は、税務署での手続きもおすすめです。
領収書
確定申告の手続き自体には必要ありませんが、各申請書類の記入やお金の流れの確認などに必要です。
また、事業に関わる領収書は確定申告後から7年間の保管が所得税法で義務付けられています。
場合によっては税務調査などで提出が求められるので、事業に関わる領収書は全て保管してください。
保険の明細書
生命保険や地震保険などに関わる支払い明細書も、きちんと管理しましょう。
各種保険料控除の際に必要になります。
特に社会保険料の控除には上限がありません。
社会保険は一人親方が大手ゼネコンと仕事をする場合や仕事を受注した場合に社会保険に加入していることは必須と言えます。
つまり支払った社会保険料の全額が控除の対象になるのです。
1人親方にとって欠かせない控除なので、見落しのないように気をつけてください。
還付金受け取りの為の口座
還付金が発生する場合にスムーズに受け取れるよう、受け取り用の口座を前もって用意しておきましょう。
ただし、一部のネット銀行では還付申告を受け付けていない場合もあります。
口座を作る前に忘れずにチェックしてください。
郵便局の窓口で受け取ることもできますが、口座振替と比較すると受け取りまで時間がかかる点に注意です。
場合によって必要になる書類
つづいては、事前の準備が必要になる場合がある書類を見ていきましょう。
以下の3つの書類を見てください。
場合によって必要になる書類
- 医療費控除の為の明細
- 寄付金の受領書
- 固定資産台帳
該当しないかどうか前もってチェックしてください。
医療費控除の為の明細
1月1日から12月31日までの期間に発生した医療費が10万円を越える場合には、医療費控除を申請できます。
申請が認められれば、支払った税金の一部が還付金として受け取れるので忘れずにチェックしてください(限度額200万円)。
申請の際にはそれぞれの健康保険が発送する「医療費通知」が必要なので、手元に届いた際にはきちんと保管しましょう。
なお、発送のタイミングはそれぞれの保険によって異なるので、事前の確認をおすすめします。
寄付金の受領書
学校法人や公益財団法人などへの寄付、さらにはふるさと納税などをおこなった場合、寄付金控除を申請できます。
寄付をおこなった場合、寄付をした自治体や法人から「寄付金受領証明書」が発行されます。
寄付金控除を申請する際に必要な書類なので、紛失しないようきちんと保管してください。
固定資産台帳
確定申告の種類が青色申告で、なおかつ減価償却が必要な資産がある場合には固定資産台帳の作成が求められます。
資産を10万円を越える額で購入した場合に該当するので、確認してください。
テンプレートは存在せず、以下の要素が明記されていれば書類として認められます。
固定資産台帳に必要な項目
- 償却方法
- 償却率
- 耐用年数
- 償却額
- 取得の価格
- 未償却の残高
なお、白色申告の場合は作成は任意です。
1人親方が確定申告をする流れ
続いて、1人親方が確定申告をおこなう具体的な流れを見ていきましょう。
以下のステップを見てください。
それぞれのステップを見ていきましょう。
帳簿の記入
確定申告をおこなうには、日々の帳簿の記録が欠かせません。
確定申告に必要な書類は、帳簿の記録をもとに記入します。
帳簿がなければ確定申告はおこなえないので、1人親方の業務の一環として必ず記録しましょう。
手書きでの帳簿付けが苦手な人には、会計ソフトやエクセルでの帳簿付けをおすすめします。
効率があがるだけでなく、計算間違いなども発見しやすいです。
所得金額の計算
所得金額は以下の計算式で算出できます。
課税所得金額の計算
課税所得金額は、以下の計算式で算出できます。
- 社会保険・地震保険・生命保険などの保険料
- 障碍者控除
- 配偶者控除
- 医療費
それぞれによって控除の金額が異なりますが、いずれも1人親方にとって重要な控除対象なので各明細書は大切に保管してください。
各書類に記入
所得や控除額などが算出できたら、先ほど解説した書類への記入をおこないます。
この際におすすめなのが、電子申告システムです。
パソコンやスマートフォンでの書類作成が可能で、時間や労力を大きく節約できます。
また書き漏らしや書き間違いがある場合にも修正がしやすく、煩雑な手続きが苦手な人には特におすすめです。
スマートフォンではアプリケーションなどもあり、申告もモバイルから手軽に記載することが可能ですが、事業を大きく展開していて、仕事の受注数や経費が多い事業主はパソコンのエクセルで見やすい帳簿付けがマストです。
以下に帳簿付けテンプレートをフリーでDLできるサイトを紹介します。
https://office-hack.com/excel/books/
税務署へ書類を提出
書類の記入が終わったら、お住まいの地域を管轄する税務署へ書類を提出しましょう。
土日祝日は窓口での手続きはできないものの、申告書の投函は可能です。
またマイナンバーカードがあれば、e-Taxを使ってパソコンやスマートフォンで24時間いつでもどこでも確定申告が可能です。
忙しい1人親方にとって嬉しいシステムと言えますね。
自宅で確定申告を完結させたい方は、まずはマイナンバーカードの取得をおすすめします。
1人親方が確定申告をする上での注意点
1人親方が確定申告をする上では、押さえるべき注意点もあります。
以下の2項目を見てください。
1人親方が確定申告をする上での注意点
- 期限を厳守する
- 労災保険は経費にできない
うっかり見落とすと面倒な事態になるので、要チェックです。
期限を厳守する
確定申告の手続きには期限が設けられています。
原則として毎年2月16日~3月15日までと定められており、期限を越えてしまった場合には「延滞税」「無申告課税」などのペナルティが課せられます。
特に青色申告をする場合は要注意です。
青色申告最大のメリットともいえる「青色申告特別控除」が受けられなくなってしまいますよ!
確定申告は余裕をもって準備をすすめましょう!
労災保険は経費にできない
1人親方の場合、労災保険は必要経費として認められない点に要注意です。
労災保険は被雇用者、つまり従業員に適用されるもので、1人親方は対象になりません。
そのため、1人親方が労災保険を控除の対象として申請することはできないのです。
代わりに、社会保険料控除が適用されるので間違えないように注意してください。
まとめ~1人親方の確定申告は事前の準備が大切~
この記事では1人親方の確定申告の方法について、必要書類や注意点などを解説してきました。
確定申告には青色申告・白色申告の2種類があり、それぞれ控除の内容や必要書類が異なります。
自分が手続きする確定申告を決めたら、混同しないように注意してください。
また、確定申告は電子申告システムを使用することで大幅な効率アップが可能です。
時間・体力の節約に役立てましょう。
加えて定められた期間内に確定申告を済ませないと、ペナルティが課せられる点にも注意が必要です。
必要な書類や踏むべき手順などを前もって確認して、余裕のある申告を心がけてください。