建築業界で独立するには、建築業許可の取得が必要です。
「経験もスキルも十分積んだし、そろそろ独立したい!」と考えている人は、まずは建築業許可と独立開業の流れを押さえましょう。
独立開業にあたっては、綿密な計画と必要な流れの把握が不可欠です。
勢いだけで起業できるほど、独立は用意ではありません。
とはいっても、難しそうな手続きや手順を自分ひとりで勉強するのは難しいですよね。
この記事では建築業許可を取って独立開業するときの流れについて、注意点などもまじえながら解説していきます。
ぜひ参考にしてください!
建築業界で独立開業するおおまかな流れ
まずは建築業界で独立開業する流れを押さえてください。
下の図を見てみましょう。
このように、建築業界で独立開業するには大きく分けて5つのステップを踏む必要があります。
いずれも大切な手順なので、見落としのないように気をつけてください。
では、それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
独立資金の調達
後ほど解説するように、建築業界で独立開業するには「建築業許可」が必要となります。
建築業許可を取得するには、最低でも500万円以上の自己資本が必要です。
「自己資本」とは、事業経営をする上で返済の必要のない資金、つまり借金などで調達していないお金を指します。
建築業界での独立開業にあたっては、重機や工具、パソコンなどさまざまな備品も必要です。
新品ばかりを揃えるとすぐに資金難に陥ってしまうので、家庭用のコピー機や中古の重機を用意するなどして、初期費用を抑えることをおすすめします。
事務所・事業所の準備
次に必要なのが、業務の拠点となる事務所の準備です。
資金に余裕がある場合は新たに物件の購入や賃貸もできますが、費用を抑えたい場合は自宅を事務所として登録することをおすすめします。
購入備品を少なくできるだけでなく、通勤の手間もありません。
さらに借家にお住いの場合は、家賃の一部を経費に計上できます。
一方、自宅以外の場所を事務所に登録する場合にも、対外的な信用度のアップにつながるというメリットもあります。
資金の具合などを考えて、最適な事務所選びを心がけてください。
また、開業初年度に500万円以上の売り上げが予測される場合、会社の設立も良い選択です。
所得税を支払う際、個人事業主としてではなく法人税を支払うことで節税につながる場合があるからです。
節税が期待できる基準がおおよそ500万円なので、売り上げ見込みと相談して決めましょう。
開業届の作成・提出
続いては、地域を管轄する税務署に開業届を提出します。
開業届は国税庁のホームページからダウンロード可能なので、自分でフォーマットを作成する必要はありません。
記入例を参考に、書き漏らしのないように注意しましょう。
また、作成した開業届は必ずコピーを取っておきましょう!
開業後さまざまな場面で必要になるので、大切に保管してください。
建築業許可の取得
いよいよ最後の山場である建築業許可の取得に進みます。
建築業許可の取得に当たってはさまざまな条件のクリアが必要です。
のちほど詳しく解説するので、見落しのないようにしっかり目を通してください!
始業
建築業許可の申請が受理され、無事に審査に通過すれば晴れて独立開業実現です!
建築業許可の申請から1ヵ月~2ヵ月程度で、「許可通知書」という形で審査の結果が送付されます。
建築一式工事などは含まれません。
許可通知書は、再発行がされません!
失くしてしまうと非常に面倒なことになるので、金庫にしまうなどして大切に保管してくださいね!
建築業界の独立に必要な建築業許可とは?
では次に、建築業許可について抑えましょう。
「建築業許可」とは工事の民間・公共問わず、建築工事の事業運営に必要な許可証をいいます。
建築業許可申請は、大臣認定の場合は都道府県庁、知事認定の場合は管轄の地方整備局でおこないましょう。
法的に該当する建設業は29業種の建設工事が該当します。
また「軽微な建設工事」のみを請け負う場合には建築業許可は必要ありません。
軽微な建設工事とは以下の事をいいます。
- 工事1件の請負代金が1500万円未満、または延べ面積が1500㎡未満の木造住宅工事
ただし、建築業許可は今後の事業運営に大きくかかわる重要な要素です。
間違いがあると困るので、自分の事業計画をもとに整備局での相談をおすすめします。
建築業許可の取得条件
そんな建築業許可ですが、取得に当たってはクリアしなければならない条件がたくさんあります。
一つでもクリアできないと建築業許可証は発行されないので、気をつけましょう。
以下に挙げる4つの条件を見てください。
- 経営業務の管理責任者が最低1人いること
- 専任技術者が最低1人いること
- 所定以上の自己資本があること
- 欠格要件がなかったり誠実性があること
それぞれ詳しく見ていきましょう。
経営業務の管理責任者が最低1人いること
建築業況許可を得るには、「経営業務の管理責任者が最低1人以上」いなければなりません。
といわれても、いまいちピンとこないですよね。
次の項目で、経営業務の管理責任者とは誰を指すのか解説します。
しっかり確認してください。
経営業務管理責任者とは?
経営業務管理責任者(経管)とは、「建設業関連の仕事の経営経験を持っている人」を指します。
経営業務管理責任者になるには条件があるため、誰にでもなれるポジションではありません。
以下に挙げる条件を見てみましょう。
- 許可を受ける建設業種に関連して、5年以上の経営経験があること
- 許可を受ける建設業の業種「以外」で、7年以上の経営経験があること
- 許可を受ける建設業種に関して、経営業務管理責任者に準ずるポジションにあり、会社の執行役員として、経営業務を5年以上管理していた経験があること
- もしくは7年以上の経営業務補佐の経験があること
このように、5年もしくは7年以上の経営業務経験が無い人は、経営業務管理責任者にはなれません。
定義がわかりづらい場合は、窓口の職員に問い合わせてみましょう。
専任技術者が最低1人いること
経営業務管理責任者と同じく、最低1人以上の設置が義務づけられているのが「専任技術者」です。
専任技術者は経営業務管理責任者と同じく、所定の条件をクリアしなければならないので、誰にでも専任できるわけではありません。
次で詳しく見ていきましょう。
専任技術者とは?
専任技術者とは、契約の適切な締結や履行確保を目的とし、見積書の作成やクライアントとの技術的なやり取りを担当するポジションをいいます。
専任技術者になる人は「建築士」や「1級施工管理技士」など定められた資格をもっているか、以下の条件を備えている必要があります。
- 建設業種に応じた実務経験が10年以上ある人
- 大学もしくは高専で、建設業種に応じた指定学科を修了した後、3年もしくは5年以上の実務経験を積んだ人
技術的な知識や経験が求められるので、技術力はもちろんコミュニケーション能力やマネジメント能力が要求されるポジションです。
所定以上の自己資本があること
この場合の所定以上の自己資本とは「現金500万円以上か500万円以上の純資産」を指します。
現金で500万円以上を持っている証明は、銀行から発行される残高証明書の提出で可能です。
欠格要件がなかったり誠実性があること
上で解説した条件以外にも、細かな条件が存在します。
それは、欠格要件や誠実性です。
一見すると抽象的ですが、それぞれ以下の様に判断されます。
- 誠実性:契約や契約遂行に対して不正や違反などがないこと
- 欠格要件:各種申請書や関連書類に虚偽や重大な書き漏らしが無いこと
建築業者として利益を上げるためには、当たり前のことばかりですね。
多くの申請者は、この条件に関しては問題なくクリアしています。
建築業許可を取得する流れ
最後に、建築業許可を取得する大まかな流れをチェックしましょう。
以下の手順を見てください。
- 独立に必要な許可を把握する
- 許可に必要な条件をクリアしているか確認する
- 必要書類を集める
- 申請書に記入・提出する
- 審査の結果をまつ
- 建築業許可取得!
それぞれ詳しく解説します。
①独立に必要な許可を把握する
一口に建築業といっても、「一般建築業」「特定建築業」「大臣許可」「知事許可」などさまざまな区分・業種があります。
現在存在している建築業種だけでも29種類あり、自分がどの業種で独立するかによって許可の種類も変わるのです。
自分の授業計画をよくふりかえって、どの業種に属するのかを明確にしてください。
判断に迷ったら、必ず手続きをする施設に問い合わせましょう。
②許可に必要な条件をクリアしているか確認する
先ほども解説したように、建築業許可を取得するには「500万円以上の資本」や「専任技術者の設置」などさまざまな条件があります。
1つ1つチェックして、条件をクリアしているか確認してください。
③必要書類を集める
建築業許可申請に必要な書類は膨大で、実に30種類以上の書類を用意しなければなりません。
各都道府県の県庁や整備局で入手できますが、都道府県庁のホームページからもダウンロード可能です。
1つでも書類が足りないと申請ができないので、確実に入手しましょう。
また、各書類は提出の3ヵ月以内に入手したものでなければ効力がない点にも要注意です。
計画的に書類をそろえてくださいね!
④申請書に記入・提出する
書類が揃ったら、書き漏らしが無いよう1つ1つ慎重に記入してください。
記入すべき書類は山のようにあります。
建築業許可申請のなかでも最も時間と体力がいる作業ですが、書き漏らしがあるとやり直しになってしまうので、気をつけましょう。
また、作成した書類はかならず全てコピーを取っておいてください。
書類の提出先は、大臣許可の場合は地方整備局、知事許可の場合は都道府県庁となります。
書類の申請には手数料がかかるので注意しましょう。
⑤審査の結果をまつ
ようやく書類の提出が終わっても、油断はできません。
申請書の内容に誤りや書き漏らしがないかどうか、チェックされます。
不備があった場合には申請のやり直しが必要です。
無事チェックが終われば申請書に受付印が押され、コピーが返却されます。
しかし、これはあくまでも「受理が終わった」だけで、建築業許可がおりたわけではありません。
こののちの審査を経てようやく建築業許可がおりるのです。
⑥建築業許可取得!
数か月に渡る審査や事務処理を終え、問題ないと判断されれば晴れて建築業許可が取得できます!
建築業許可がおりた場合には「許可通知書」が郵送されます。
場合によっては指定の機関まで申請者が取りにいかなければならないケースもあるので、注意しましょう。
また、先ほど解説したように「許可通知書」は再発行できない書類です。
紛失には十分に注意して、大事に保管してください!
まとめ~建築業界で独立開業するなら建築業許可が必要~
この記事では建築業界で独立開業するために必要なステップを、順を追って解説しました。
建築業界で独立開業するには、一定の場合を除いて建築業許可が必要です。
建築業許可を取得するにはクリアしなければならない条件がさまざまあり、申請のための書類も膨大な数にのぼりますが、建築業界で活躍するための最初の大仕事としてきちんと済ませましょう!
また、せっかく苦労して手に入れた「許可通知書」は、一度なくすと再発行ができないので大切に保管してください。