- ダクト工事には「新築工事」と「改修工事」がある。空調ダクト工事や排煙ダクト工事など、さらに細かく分けられる。
- ダクト工事は、相談・見積もりからスタートし、取り付け・試運転を経て完了する。費用相場は3~300万円。依頼主は複数社から相見積もりを取り、比較することが重要。
ダクト工事とは、空気やガスの流れをコントロールする管(ダクト)を、建物内に設置する作業のことです。
マンションの一室から巨大な空港に至るまで、利用に欠かせない空調・換気・排気・排煙の役割を果たしています。
本記事では、ダクト工事の基本的な手順や、ダクト工事の種類、ダクト工事の費用相場について解説します。
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無資格・未経験で応募できる求人もあるため、ぜひ確認してみてください。
ダクト工事の基本
ダクト工事とは、建物の構造や用途に応じて、適切なダクトを新築したり、改修したりする工事のことです。
ダクトとは空気やガスが通る配管
ダクトとは、空気やガスなどの「気体」を運ぶための管状設備のことです。
建物内の空気を循環させたり、外部と空気を入れ替えたりする役割を果たします。
ダクトとは排気や給気に使用する配管のことである。建築物内では主に空調、換気、排煙の目的で設けられ、エアダクト、風導管、通風管とも呼ばれる。
ダクトの役割
- 空調設備:冷暖房の風を室内へ届ける
- 換気設備:汚れた空気を屋外に排出
- 排煙設備:火災時に煙を外へ逃がす
ダクトは建物の内部や天井裏、壁面に隠れているため、普段は意識しにくい存在です。
しかしダクト工事がなければ、あらゆる快適な施設や設備は成り立ちません。
エアコンの風や、室内換気扇で吸い込まれた空気の通り道として必要不可欠であり、日本中の空調設備を陰ながら支えているのがダクトです。
商業施設や飲食店、病院、オフィスビルといった大きな建物だけではなく、一般的な住宅にもダクトは備わっています。
ダクト工事には「新築工事」と「改修工事」がある
ダクト工事とは、建物の構造や用途に応じて、適切なダクトを設置する工事のことです。
ダクト工事は、「新築工事」と「改修工事」の2つに大きく分けられます。
工事区分 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
新築工事 | 新しい建物に空調設備を設置 | 設計段階から計画され、基本的に設計通りに進行 |
改修工事 | 既存建物の空調設備を更新 | 空調設備の老朽化・効率改善が主な理由 |
新築工事とは、新しい建物に空調設備を設置する工事です。
一方改修工事とは、既存の建物の空調設備を更新する工事を指します。
新築工事に比べ、改修工事では実際に工事を開始してから判明する問題が多く、発注者の判断に頼ることが多くなります。※
トラブルを防ぐためには、発注者との相互確認がより重要です。
※参考:一般社団法人 日本建設業連合会|改修工事の落とし穴 ~事例から学ぶトラブル防止策
ダクト工事の手順
ダクト工事は、次の手順で進行します。
ダクト工事の流れ
- お客様から依頼
- ダクトを設置する現場の調査・打ち合わせ
- 見積もり
- 打ち合わせの内容をもとに、図面を作成
- 設計通りにダクトを製作
- ダクトを取り付け
- 試運転・最終確認
- トラブル時のアフターフォロー
まず、お客様から依頼が来ると、現場の調査・打ち合わせ・見積もりが行われます。
依頼者側は、複数社に見積もり依頼をして、納得のいく業者を選ぶことが重要です。
依頼のあとは、建築物の設計図や建築現場を確認した業者が、設置環境や使用用途に応じて、CADを利用して配管レイアウトを設計します。
機器の性能を最大限に発揮させ、効率的な空気の流れを実現するためには、ダクトの材質・形状・距離・配置、室内の温度や湿度、気流などを把握したうえでの設計が必要です。
空気圧を計算して設計を行い、1枚の鉄の板を切り、組み立て繋ぎ合わせながら
四方を囲まれた閉鎖的な建物の中に「空気の通り道」を作りだします。
現場では、業者が必要な場所にダクトを通し、吹出口や吸込口などの空気の出入り口と接続していきます。
ダクトの設置場所に障害物がないか確認し、安全に作業を進めましょう。
ダクト工事に必要な資格
ダクト工事の仕事をするにあたって、資格は必須ではありません。
無資格・未経験でも、ダクト工事の仕事に転職・就職は可能です。
実際、求人サイト「GATEN職」に掲載されている72件のダクト工事の求人(2025年5月時点)の中には、未経験歓迎と書かれているものが多数見られます。
しかし国家資格を持つと、携われる業務の幅が広がり、仕事にやりがいが感じられます。
ダクト工事に関する資格は、工事の行程管理、品質管理、安全管理業務を行なう「管工事施工管理技士」や、配管工事の技能を認定する「配管技能士」などです。
ダクト工事の資格 | 概要 |
---|---|
「管工事施工管理技士」 | 工事の行程管理、品質管理、安全管理業務を行なう資格 |
「配管技能士」 | 配管工事の技能を認定する資格 |
ダクト工事の種類
ダクト工事には「新築工事」と「改修工事」がありますが、さらに次の種類に細かく分けられます。
空調ダクト工事
「空調ダクト工事」とは、室内の温度・湿度・空気の質をコントロールするための、「空気を運ぶ管」の工事です。
空調ダクトには、おもに次の4種類があります。
空調ダクトはおもに4種類
- 外気ダクト(OA):屋外から新鮮な空気を直接取り入れる。虫・粉塵の除去フィルターが付いている
- 給気ダクト(SA):空調機で処理済みの快適な空気を、室内に送る
- 還気ダクト(RA):室内の空気を空調機に戻す
- 排気ダクト(EA):汚れた空気を屋外へ排出する
名称 | 英語表記 | 空気の流れ |
---|---|---|
外気ダクト | OA(Outdoor Air) | 外 → 空調機 |
給気ダクト | SA(Supply Air) | 空調機 → 室内 |
還気ダクト | RA(Return Air) | 室内 → 空調機 |
排気ダクト | EA(Exhaust Air) | 室内 → 屋外 |
たとえば、エアコンや空調機で作られた冷気・暖気を室内に「送る」ための管も、室内の汚れた空気を空調機に「戻す」ための管も、まとめて「空調ダクト」と呼びます。
屋内の温度を一定に保ちつつ、空気を綺麗に保つためには、空調ダクトの存在が極めて重要です。
屋内の温度を一定に保ちながら、常に空気を入れかえます。ビル・商業施設・コンサートホールなどの利用者の多い施設には欠かせない設備です。
給気ダクト工事
空気の流れ | 空調機 → 室内 |
---|---|
役割 | 空調機で調整済みの快適な空気を、室内に送る |
「給気ダクト(SA)工事」とは、空調機から各室内の吹き出し口へつながっているダクトの工事です。
給気ダクトは空調ダクトの一種であり、空調機で調整済みの快適な空気を、室内に送る役割を果たしています。
排気ダクト工事
排気ダクト(EA:Exhaust Air)とは | 汚れた空気や臭気を屋外へ排出 |
---|---|
役割 | 建物と利用者の健康・快適さを守る |
「排気ダクト工事」は、室内の汚れた空気を屋外に排出するためのダクトを、新設・改修する工事です。
特に飲食店や工場、トイレ、喫煙所などではニオイや湿気がこもりやすいため、排気ダクトが重要となります。
また、ウイルス対策やカビの防止など、空気環境の衛生を守る目的でも使用されます。
建物の健康と利用者の快適さを守る要の設備です。
換気ダクト工事
排気ダクト(EA)工事と換気ダクト工事は似ていますが、厳密には役割が少し異なります。
「換気ダクト」は、「外気の取り込み」・「屋内の空気の排出」の両方を担う点が特徴です。
汚れた空気とフレッシュな空気を入れ替え、空間を衛生的に保ちます。湿気・粉塵・カビなどの原因となる汚れた空気とキレイな空気を入れ替えています。飲食店のトイレをはじめ、食品工場や精密機械工場、空港・病院のクリーンルームなど、様々な場所で重要な役割を果たしています。
一方で排気ダクトは、汚れた空気・臭気・湿気などを屋外へ「排出」するためだけのダクトです。
- 排気ダクト(EA):汚れた空気を捨てる
- 換気ダクト:汚れた空気を捨て、新鮮な空気を取り入れる
還気ダクト工事
「換気ダクト工事」と混同しやすい「還気ダクト工事」もあります。
「換気ダクト」も「還気ダクト」も、室内外の空気の流れに関わるダクトですが、その役割は異なります。
室内の空気を空調機に「戻す」ためのダクトが、「換気ダクト」です。
一方、換気ダクトは室内の空気を外部に排出し、外部の空気を室内に取り入れる役割を担っています。
- 換気ダクト:室内の空気を外部に排出し、外部の空気を室内に取り入れるダクト
- 還気ダクト:室内の空気を空調機に「戻す」ためのダクト
排煙ダクト工事
排煙ダクトの用途 | 火災発生時に煙を排出する |
---|---|
別名 | SEA(Smoke Exhaust Air)ダクト |
排煙ダクト(SEA)工事は、火災発生時に、煙や有害ガスを屋外に排出するための緊急用ダクトの工事です。
火災時、最も危険と言われる煙を排出するため、ビルやマンションなどの施設に必ず設置されます。消防法や建築基準法によって換気や排煙、風量などの基準値が定められている中で、最も効率的に排気が行える導管配置技術が求められます。
タバコや焼き肉の煙を外に排出するダクトではなく、あくまで火災時専用のダクトを指します。
建築基準法では、一定の基準を満たす建物に、所定の排煙設備の設置が義務付けられています。
【排煙設備の設置条件】
- 防煙区画の最大床面積が500㎡以下
- 排煙口から防煙区画までの水平距離が30m以下
- 防煙区画を仕切る垂れ壁は、天井から50cm以上突き出す
- 防煙用の垂れ壁は不燃素材を使用する
- 排煙口は、天井高さが3m未満は天井から80cm以内
※参考:昭和二十五年政令第三百三十八号「建築基準法施行令」
とくに高層ビルや大型商業施設では、避難経路の安全確保に直結するため、排煙ダクトの工事は法的にも非常に重要です。
集塵ダクト工事
集塵ダクトの用途 | 工場や作業場の粉塵や微粒子を排出・集塵 |
---|---|
集塵ダクトが必要な施設例 | 木工所・印刷工場・金属加工現場など |
集塵ダクト工事とは、粉塵や細かな粒子を含んだ空気を吸引して、集塵機へ送るためのダクトの工事です。
屋内で発生した有害物質を、そのまま外へ放出してしまうと、大気が汚染されます。
また、排気口から有害物質が屋内に戻ってしまうリスクもあるでしょう。
そこで、集塵機で埃やごみを吸引除去し、きれいな空気にしてから外へ排出します。
人々の健康と安全を守るために、集塵ダクトの整備は欠かせません。
ダクト工事の費用相場【飲食店】
飲食店におけるダクト工事の費用相場は、次の通りです。
ダクト工事の費用相場
東京消防庁「飲食店におけるダクト火災抑制方策に関する検討結果」によると、火災件数は減少傾向にある中、逆に飲食店の火災件数は増加傾向にあります。
七輪等を火気器具として用いる焼肉店舗等に設置される調理器具上方に付属する排気ダクトに係る火災は、近年増加しており、適切な工事が求められている状況です。
ダクト工事の費用相場は3万円~300万円
ダクト工事の費用は、3万円~300万円と幅が広いです。
たとえば、厨房・店舗やビル・マンションでダクト工事を行う「有限会社広積」の公式サイトには、最安3万円からと記載されています。
費用は現場によって変動するため、ダクト工事業者の公式サイトで正確な料金を知ることはできません。
まずは相談・見積もりをする必要があります。
なお、家のキッチンやトイレ、窓などに設置されている換気扇と繋がっている「家庭用ダクト」の修理であれば、数千円~数万円です。
家庭用ダクト(換気扇)の種類 | 費用相場※ |
---|---|
壁付プロペラファン | 約7千円~ |
レンジフードや天井埋め込み型 | 約2万円以上 |
※参考:有限会社大本工業
排気口の設置位置が高いほどダクト工事費用も高くなる
ダクト工事の費用を大きく左右する要素のひとつが、排気口の設置位置の高さです。
たとえばビルの1階にあるテナントでも、屋上までダクトを伸ばす必要があるケースでは、施工距離が長くなるため工賃・部材費がかさみます。
また、高所作業車の使用や、近隣住民・テナントとの調整といった工程も加わるため、費用は大幅に上がることがあります。
「建物が1階層上がるたびに、費用が約20万円上がる」と言われているほどです。
費用が高くなる要因
- 屋上や高所への排気口設置
- ダクト配管距離が長い
- 曲げ配管が多い(作業工程が複雑になる)
ダクト工事の費用を抑えるためには、「ダクトを屋上まで上げる必要がない物件選び」がポイントです。
具体的には、次の2点を満たす物件を選ぶと、ダクト工事の費用を抑えられます。
- 排気をそのまま壁から出しても良い物件
- 特殊な消臭装置を付ける必要がない物件
ダクト工事に関するよくある質問
ダクト工事に関する、よくある質問に回答します。
ダクト工事に関するよくある質問
- ダクト工事はきつい?
- ダクト工事に向いている人の特徴は?
ダクト工事はきつい?
ダクト工事のきついところ
- 重い材料の運搬がある肉体労働
- 高い場所での作業がある
- 夏場の暑さや冬場の寒さなど作業環境が厳しい
ダクト工事は体力的にきついと感じる場面が多い仕事です。
高い場所での作業や、重い材料の運搬、夏場の暑さや冬場の寒さなど、作業環境も厳しい場合があります。
しかし、専門的な技術を習得でき、やりがいを感じられる仕事でもあります。
ダクト工事に向いている人の特徴は?
ダクト工事に向いている人
- 空調システムに興味がある
- 体力に自信がある
- 高い場所での作業に苦手意識がない
ダクト工事に向いているのは、空調システムに興味がある人です。
また、体力に自信があり心身ともに健康な人や、高所恐怖症ではない人などにも向いています。
ダクト工事をする際は相見積もりを取ろう
ダクト工事は建物の構造や業態によって大きく内容が異なり、費用も大きく変動します。
そのため、1社だけでなく複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」を取ることが重要です。
相見積もりをすることで、適正価格を把握し、過剰な請求や施工ミスを避けることができます。
また、価格だけでなく対応の丁寧さやアフターサービス、施工実績も比較して選ぶようにしましょう。
ダクト工事で後悔しないためのポイント
- 最低でも2〜3社から相見積もりを取る
- 業者の施工実績や口コミを確認する
- 価格だけでなく提案内容・保証もチェック
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