塗装業は比較的独立しやすい職種の一つで、独立すれば収入の上限がなくなり、自分のペースで仕事ができるといったメリットもあります。
実際、塗装業で独立した一人親方の賃金は年収にすると約537万3,870円であり、常用の塗装工(日給制や月給制)の平均年収約413万円を大きく上回っています。
塗装業の平均賃金 | ||
---|---|---|
項目 | 日当 | 年収 |
一人親方 | 2万1,845円 | 537万3,870円 |
常用(日給制や月給制) | 1万6,825円 | 413万8,950円 |
差額 | 5,020円 | 123万4,920円 |
参考:全建総連東京都連合会「2023年(R5年)賃金調査報告書」
※年収は1年間の労働日数を246日とした場合の計算(令和7年の平日日数)
しかし、開業資金の確保や営業力の向上など、独立を成功するためには事前の準備と戦略が欠かせません。
本記事では、塗装業で独立するメリットや成功のポイントについて詳しく解説します。
塗装業での独立を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 塗装業は比較的独立しやすく、成功すれば収入アップや自分のペースで働ける等のメリットがある。
- 元請けの仕事を増やす、紹介受注や施工事例を活用する等の、安定した収益を確保する工夫が大切
関連記事:建設業で独立した場合の年収は?職種ごとの年収や年収アップのコツを解説
塗装業で独立するメリット
塗装業は比較的独立しやすい職種の一つです。
現場経験を積み、必要な道具をそろえれば、一人親方として開業できます。
ここでは、塗装業で独立するメリットについて詳しく解説します。
収入面や働き方の自由度など、独立を考える際に押さえておきたいポイントを確認しましょう。
塗装業で独立するメリット
- 収入アップを目指せる
- 自分のペースで仕事ができる
収入アップを目指せる
塗装職人として会社に所属している場合月給や日給制で収入が決まり、平均年収は約413万円前後となっています。
引用:全建総連東京都連合会「2023年(R5年)賃金調査報告書」図表 19
一方、塗装業の一人親方の平均年収は約537万円なので、塗装業で独立すると独立前より約123万円も平均年収がアップしています。
引用:全建総連東京都連合会「2023年(R5年)賃金調査報告書」図表 22
一人親方と常用(日給制や月給制)の塗装業の平均賃金をまとめると以下の通りです。
塗装業の平均賃金 | ||
---|---|---|
項目 | 日当 | 年収 |
一人親方 | 2万1,845円 | 537万3,870円 |
常用(日給制や月給制) | 1万6,825円 | 413万8,950円 |
差額 | 5,020円 | 123万4,920円 |
参考:全建総連東京都連合会「2023年(R5年)賃金調査報告書」
独立した場合は売上がそのまま収入につながるため、働き次第で上限なく収益を伸ばすことが可能です。
実際に、成功している塗装業の一人親方の中には、年収1,000万円を超えるケースもあります。
自分のペースで仕事ができる
独立すると、自分の裁量で仕事のスケジュールを決めることができます。
自分の裁量で仕事のスケジュールが決められると、以下のようなメリットがあります。
自分の裁量でスケジュールが決められるメリット
- ライフスタイルに合わせて、自分のペースで働ける
- プライベートの予定と両立しやすい
- 体調不良や急なトラブルにあった時でも、スケジュールが組み直しやすい
- 案件数を調整しながら、無理のない範囲で働ける
- 自分の業務の流れや得意な時間帯に合わせて、効率的に働ける
たとえば、繁忙期には仕事量を増やして収益を確保し、閑散期には休暇を取るといった柔軟な働き方もできます。
また、施工内容や顧客対応なども自分の方針で決められるため、理想の経営スタイルを追求できます。
塗装業で独立するための事前準備
塗装業は比較的独立しやすい職種ですが、成功するためには事前準備が欠かせません。
開業に必要な資金や道具をそろえるだけでなく、資格取得や営業力の強化も重要なポイントです。
また、独立後すぐに仕事を受注できるよう、元請けとの関係を築いたり、集客方法を確立しておくことも大切です。
ここでは、塗装業で独立するために必要な準備について詳しく解説します。
塗装業で独立するための事前準備
- 独立資金を調達する
- 資格を取得する
- 営業力を身につける
- 道具や車両を用意する
- 開業手続きを行う
独立資金を調達する
塗装業で独立する際には、開業資金と運転資金を確保する必要があります。
一人親方団体労災センターによると、建設業の独立には最低でも100万円は資金が必要とされています。
建設業の独立に必要な資金は、業種や従業員の有無などにより異なります。資金があればあるに越したことはないですが、最低でも100万円は準備したほうがよいといわれています。
とはいえ、100万円はあくまで最低資金です。
塗装業で独立するためには、以下のような費用が必要となるでしょう。
塗装業での独立に必要な費用
- 開業手続きの費用(個人事業主として開業する場合は無料)
- 作業車両の購入(中古車であれば費用を安く抑えられる)
- 事務所や倉庫の費用(自宅で仕事をすれば、無料でも可能)
- 塗装道具や機材の購入(スプレーガンやコンプレッサー、高圧洗浄機、ローラーなど)
- 資材・塗料の仕入れ費
- 保険費用(労災保険、請負業者賠償責任保険など)
- 仕事を受注して報酬が振り込まれる間の生活費(最低でも3ヶ月程度は必要)
自己資金で足りない場合は、日本政策金融公庫の「創業融資制度」や自治体の創業支援制度を活用する方法もあります。
資格を取得する
塗装業で独立するために必須の資格はありませんが、仕事上の信頼を得るためには取得しておくのが望ましいです。
たとえば、「塗装技能士」資格は、技術力を証明できる国家資格で、1級・2級・3級に分かれています。
塗装技能士1級 | 塗装技能士2級 | 塗装技能士3級 | |
---|---|---|---|
対象者 | 実務経験7年以上 | 実務経験2年以上 | 未経験から受験可能 |
特徴 | 高度な技術と知識を持ち、管理職や独立を目指す人に適している | キャリアアップを目指す若手職人に適しており、技術力を証明できる | 初心者向けで、基礎的な知識と技術を習得するための第一歩 |
試験内容 | 学科試験と実技試験 | ||
合格率 | 38.3% | 0.6% | 28.7% |
また、塗装技能士は以下の5つの区分に分けられています。
区分 | 詳細 |
---|---|
木工塗装作業 | 家具や手すりなどの木材製品の塗装 |
建築塗装作業 | 住宅やビルなどの建造物の塗装 |
金属塗装作業 | 車の板金塗装などの金属製品の塗装 |
噴霧塗装作業 | スプレーガンを使用した塗装 |
鋼橋塗装作業 | 鋼橋を雨や風、塩などから守るための耐久性の高い塗料を使った塗装 |
また、高所作業を行う際に必要な「足場の組立て等作業主任者」も、労働安全衛生法に定められた作業主任者(国家資格)のひとつです。
足場工事を行う事業者は、「足場の組立て等作業主任者」の選任が「義務」となっているので、需要もあります。
作業主任者は、労働安全衛生法第14条外部リンクが開きますにより、労働災害を防止するための管理を必要とする一定の作業について、その作業の区分に応じて選任が義務付けられているものです。
資格を持っていることで他社との差別化が図れ、受注につながるケースもあります。
営業力を身につける
塗装業で独立する際には、職人としての技術力だけでなく、営業力も求められます。
会社員時代は仕事を与えられることが多いですが、独立後は自分で仕事を取らなければなりません。
独立後には以下のような営業力があると、仕事をスムーズに獲得できるでしょう。
独立後に必要な営業力
- 顧客と信頼関係を築くためのコミュニケーション能力
- 地域社会と信頼関係を築く力
- 自分の存在を知ってもらうための情報発信や集客力
- 地域の需要や競合他社の状況を把握するための市場調査能力
- 誠実かつ明確な見積対応能力
ホームページの作成やSNSを活用した情報発信も、集客において効果的な手段となるでしょう。
道具や車両を用意する
塗装業で独立するには、仕事に必要な道具や車両の準備が欠かせません。
以下のような道具を最低限揃えるべきでしょう。
塗装業で独立するために最低限揃えるべき道具
- 刷毛
- ローラー
- スプレーガン
- バケット・ローラーバケツ
- 養生シート・テープ
- サンドペーパー、電動サンダー
- 脚立
- ブルーシート
- 作業着
- 安全靴
- ヘルメット など
塗料や道具を運ぶための車両も必要になり、軽トラックやハイエースなどがよく使われています。
独立後の仕事に支障が出ないよう、必要な設備をあらかじめ準備しておきましょう。
開業手続きを行う
塗装業で独立するには、開業届を提出するなどの手続きが必要です。
個人事業主として開業する場合は、「開業届」を税務署へ提出しなければなりません。
開業手続きの方法 | |
---|---|
提出方法 | パソコンにてe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxで提出
書面で届出書類を作成の上、税務署に持参または送付 |
提出期限 | 開業日から1ヶ月以内 |
費用 | 無料 |
受付時間 | e-Tax:e-Taxが利用可能な時間(e-Taxホームページを参照)
持参:税務署の開庁時間(平日8時30分〜17時) |
(詳しい開業手続きの方法は、国税庁のホームページを参照してください)
また、青色申告承認申請書も提出すると、節税対策になるなど様々なメリットがあります。
青色申告承認申請書を提出するメリット
- 最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられる
- 家族に支払う給与も経費にできる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 30万円未満の備品を一括で経費にできる
- 金融機関や取引先からの信頼度が高まる
不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則、(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して、確定申告書をその提出期限(確定申告期限)までに提出している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高55万円(令和元年以前は最高65万円)を控除することとされています。
引用:国税庁「No.2070 青色申告制度」
法人化する場合は、定款の作成や登記手続きが必要になり、登録免許税などの費用もかかります。
スムーズな独立のためには、必要な手続きを事前に把握しておくことが重要です。
塗装業の独立で失敗しないためのポイント
塗装業は比較的独立しやすい職種ですが、成功するには戦略的な経営が必要です。
ただ独立するだけでは安定した収入を確保することは難しく、計画的な営業や集客が求められます。
特に、元請けの仕事を増やすこと、紹介受注を増やすこと、施工事例を積み上げることが重要なポイントとなります。
ここでは、塗装業の独立で成功するための具体的な方法を解説します。
塗装業の独立で失敗しないためのポイント
- 紹介受注を増やす
- 元請けの仕事を増やす
- 施工事例を増やし信頼性を上げる
関連記事:建設業の独立開業でよくある失敗例は?原因・対策、失敗しない独立手順も解説
紹介受注を増やす
紹介受注は、営業コストをかけずに仕事を獲得できるため、利益率が高くなるメリットがあります。
特に、外壁塗装や屋根塗装は、近隣住民の関心が高く、施工後に口コミが広がりやすい業種です。
紹介受注を増やすためには、具体的に以下のような戦略を実践するのがおすすめです。
紹介受注を増やすための方法
- 紹介制度の導入:お客さんや取引先に紹介を後押ししてもらえるような紹介特典やお礼制度を設ける
- 地域コミュニティーとのつながりを持つ:商工会や地域の行事に積極的に参加する
- 実績のアピール:ビフォアアフター事例や口コミをホームページやSNSで紹介する
- 他業種との提携:リフォーム業者やハウスメーカーなど建築や住まいに関する他業種と連携し、強力な紹介ルートを構築する
元請けの仕事を増やす
塗装業で成功するためには、下請けから脱却し、元請けの仕事を増やすことが重要です。
元請け | 下請け | |
---|---|---|
定義 | お客様から直接、工事を請け負う立場の業者 | 元請けから指示を受け、工事の一部を担当する業者 |
メリット | 利益率が高い
自分の会社や屋号のブランディングができる お客様との信頼関係が直接築ける |
自分で営業しなくても仕事がもらえる
見積書や契約書などの作成が不要な場合が多い |
デメリット | 見積もりや営業など全て自分で対応しなくてはいけない
集客や広告にコストがかかる可能性がある |
利益率が低い
工期や仕様の裁量が低く、元請の指示に従う必要がある |
例えば、下請けで受注する場合の外壁塗装工事の単価が50万円だとすると、元請けで受注すれば100万円以上になるケースも珍しくありません。
ホームページを作成するなど、直接顧客からの問い合わせを増やす対策を行い、元請けとしての受注を増やしていきましょう。
施工事例を増やし信頼性を上げる
塗装業では、施工事例が信頼性を高め、集客につながる重要な要素となります。
特に、ホームページやSNSに施工事例を掲載することで、顧客が業者を選ぶ際の判断材料となります。
施工事例が多い業者は、実績が豊富に見えるため、初めて依頼する顧客にも安心感を与えることができます。
また、Googleマップの口コミや施工事例を充実させることで、検索からの集客も期待できるようになります。
塗装業の独立準備ならGATEN職がおすすめ
塗装業での独立は、適切な準備を行えば高収入を目指せる魅力的な選択肢です。
元請けの仕事を増やし、紹介受注を活用することで、安定した経営が可能になります。
営業力や経営スキルも磨きながら、自分に合った働き方を実現しましょう。
また、業界の動向を把握し、最新の技術や経営スキルを磨くことも必要です。
まずは働きながら独立に向けて必要なスキルを身につけ、人脈づくりをしていくのも、塗装業の独立を成功させるためのポイントです。
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