「鳶職は身近な職業ですが、実際はどんな仕事なの?」と疑問を持たれる方も多いでしょう。
建設現場で高所のプロフェッショナルとも言えるのが、鳶職になります。
近年、鳶職を含んだ建設業は人手不足が顕著であり、需要が高い業界です。建設業全体の就業者数は、1997年の685万人をピークに減少傾向が続いており、2023年には483万人となりました。
需要が高く就職や転職の際に有利な鳶職ですが、鳶職の具体的な仕事内容がわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、鳶職の仕事内容を徹底解説します。大工や足場屋といった他の職種との違いも解説するので、鳶職に興味のある方はぜひ参考にしてください。
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鳶職(とび職)とは
建設現場で欠かせない鳶職(とび職)は、命綱を頼りに高所で作業するプロフェッショナルです。
鳶職になるための資格取得は不要のため、誰でも仕事に従事できます。
令和7年3月における鳶職を含む建設躯体工事従事者の有効求人倍率は8.17倍と大変高く、自分に合う企業を選択できる職種です。(引用:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)について)
鳶職の基本について、以下の2点のポイントに分けてわかりやすく解説します。
鳶職(とび職)とは建設業における高所作業専門の職人
鳶職は、高い場所で安全に作業を行う専門家です。
鳶職は、地上ではなく“空中”で仕事をするのが特徴で、建物や構造物を組み立てるうえで欠かせない存在と言えます。
鳶職の仕事には以下のような特徴があります。
鳶職の仕事の特徴
- 高所での作業が中心:数メートルから数十メートルの高さでの作業が中心
- 工事の最初と最後に関わる:現場の仮設足場の組み立てに始まり、工事の終わりに撤去をする
- チームワークが大事:重機との連携や資材の受け渡しなど、他職種との連携が必要
- 安全第一:高所での事故を防ぐため、徹底した安全管理が実施される
- 体力と集中力が必須:足場の悪い場所での作業など、肉体的にも精神的のもタフさが必要
鳶職は危険な仕事である一方、やりがいや誇りも大きな仕事です。
空を背景にしてダイナミックに作業する姿は、かっこいいと思う人も多いでしょう。
鳶工(とびこう・とびく)とも呼ばれる
鳶職は正式には、鳶工(とびこう)と呼ばれます。
工事に関わる技術者や作業員には、職種ごとに「◯◯工」という名前が付きます。
たとえば、左官工や電気工などは、耳にした経験がある方もいますよね。
鳶工も、工事に関わる技術者や作業員の呼び方の一つで、建設業法や労働基準法などでも使われています。
鳶工は「とびこう」という読み方が一般的ですが、「とびく」という読み方もできます。
「とびく」という呼び方は、一部地域や年配の職人に残っていますが、現代ではあまり使われなくなりました。
建設現場や職人の間では鳶職と呼ばれ方が一般的ですが、業界団体や法令では正式に鳶工と記載される場合が多いです。
鳶職(とび職)の名前の由来
鳶職という名前の由来は、江戸時代の火消しが使っていた道具「鳶口(とびぐち)」にあります。
鳶口とは、長い棒の先に金属製の鉤(かぎ)がついた道具で、主に火事の際に建物を壊したり、燃え広がるのを防いだりするために使われていました。
当時の火消しは、火事の際にこの鳶口を使って建物を壊し、延焼を防ぎ活躍していました。
火消しの役目を担っていたのが、今でいう鳶職の原型となる人たちです。
彼らは高所作業にも長けており、屋根の上にすばやく上って作業をこなす姿は人々からも注目され、「鳶口を扱う職人=鳶職」と呼ばれるようになったとされています。
鳶職の名前の背景を知ると、現代の鳶職がただの高所作業員ではなく、伝統と誇りを受け継ぐ存在であることがよく分かります。
鳶職(とび職)の仕事内容とは
鳶職の仕事は、建設現場に欠かせない重要な役割ばかりです。
特別な資格は不要ですが、足場の組立て等作業従事者やフルハーネス型墜落制止用器具特別教育など特定の作業に従事する場合は講習に参加する必要があります。
また、とび技能士や玉掛け技能講習などの資格を取得できると、対応できる範囲が広がり、キャリアアップにも繋がります。
基本作業は、高所が中心となりますが、仕事内容は単なる足場の組立だけにはとどまりません。
鳶職の主な仕事内容を4つ紹介します。
鳶職(とび職)の仕事内容
鳶職の仕事内容について詳しく解説するので、鳶職の仕事に興味のある方はぜひ参考にしてください。
高所作業における足場の設置・管理・解体
鳶職の基本業務のひとつが、足場の設置と解体です。
建設現場では、高所作業が必要な箇所に足場を設けて作業員の安全を確保します。
足場の設置の主な作業内容
- 作業の進行状況に応じて適切な足場を計画・設置する
- 現場の環境や天候に応じた補強や調整をする
- 工事が終わった後、安全かつ迅速に解体する
足場が不安定だったり、設計ミスがあると、大きな事故につながるおそれがあるため、精密さと経験が必要です。
鳶職が設置する足場の質が、現場の安全と効率を決めると言っても過言ではありません。
建物の基礎となる骨組みの組み立て
鉄骨を使って建物の骨組みを組み立てるのも、鳶職の重要な仕事です。
建物の骨組みとなる鉄骨を、高所で正確に組み立てていくため、鳶職には高度な技術と集中力が求められます。
骨組みの組み立ての主な作業内容
- 大型クレーンを使って鉄骨を持ち上げ、正しい位置に誘導する
- 工程に合わせて順序よく骨組みを組み合わせていく
- 鉄骨をボルトなどでしっかり固定する
骨組み作業は、ほんの数ミリのズレが全体の構造に大きな影響を及ぼすため、正確さと丁寧さが不可欠です。
鳶職の骨組み作業は、建物の安全と強さを支える、なくてはならない仕事と言えるでしょう。
工事用大型設備の搬入・設置・解体
鳶職は重機や空調機、給排水設備などの工事用大型機器の設置作業にも関わります。
工事用大型設備の搬入・設置・解体作業は、重量鳶と呼ばれる大型設備の取り扱いに特化した鳶職人たちが担当します。
工事用大型設備の搬入・設置・解体の主な作業内容
- 工場内の生産設備の据え付け
- 商業ビルの大型空調設備の吊り上げ・固定
- 古い設備の解体・撤去
大型設備の設置作業は、わずかなズレや傾きが大きなトラブルにつながるため、慎重かつ確実な動作が求められます。
また、搬入経路の確保や現場との調整、重機オペレーターとの連携も重要なポイントです。
工事用大型設備の搬入・設置・解体作業は、単なる力仕事ではなく、判断力や工程管理の力も問われる仕事だと言えるでしょう。
CADオペレーター
鳶職の仕事は現場の作業だけにとどまらず、足場や鉄骨などの施工図をCAD(キャド)などのソフトを使って作成・修正する、CADオペレーターとしての業務が増えています。
鳶職のCADオペレーターとしての主な作業内容
- 足場や鉄骨などの施工図を作成・修正する
- 現場で使われる設計図の読み取りと、作業内容の確認を行う
- 現場スタッフとのやりとりを通じて、図面通りに工事ができるようにサポートする
鳶職の現場経験がある人がCADのスキルを身につければ、図面作成と現場管理の両面をこなせる貴重な人材になります。
現場で作業するだけでなく、図面を作ったり作業の流れを考えたりする、計画や管理を担当する鳶職として働く道もあります。
鳶職(とび職)の種類
鳶職にはいくつかの種類があり、それぞれの仕事には専門性や役割などに違いがあります。
主な鳶職の種類は、以下の5つです。
この記事で分かること
多くの鳶職が分類されるのが足場鳶ですが、18歳未満の方は高所での作業は禁止されているため、経験を積んで作業になれる必要があります。
それぞれの鳶職の種類について詳しく解説します。
足場鳶(あしばとび)とは
足場鳶は、建設や修理の際に必要な足場を組み立てたり解体したりする仕事です。
足場鳶の仕事には、以下のような特徴があります。
足場鳶の仕事の特徴
- 現場の最初と最後の役割を担う:建設現場の一番初めに足場を設置し、一番最後に足場を撤去する
- 現場の安全と作業効率を支える:足場の良し悪しが現場の安全や工事全体の効率に大きく影響する
- 図面の読解力や計画力が必要:図面を読み取り、現場に合った足場の設計や材料の手配、組み立ての計画を立てる力が必要
- 需要が安定している:新築工事だけでなく、修繕やリフォームなどでも足場が必要なため、安定した需要がある
足場鳶は、現場の安全を支える重要な役割を担うので、高い技術力と責任感が求められる仕事です。
安定した需要もあり、将来を見越して働きたい人にとって、足場鳶は魅力的な職種と言えるでしょう。
重量鳶(じゅうりょうとび)とは
重量鳶は、大型機械や重い装置、設備機器をクレーンなどを使って運搬・設置するのが仕事です。
特に、工場やビルなどに設置される巨大な空調設備や発電機の搬入には、重量鳶の技術が欠かせません。
重量鳶の仕事には、以下のような特徴があります。
重量鳶の仕事の特徴
- 扱うものが超重量:大型機械や鉄骨構造物など、数トン〜数十トンにもなる物体を扱う
- 資格や免許の取得が求められる:玉掛け技能講習やクレーン運転士など、専門的な資格や免許が必要な場合が多い
- 体力だけでなく、判断力・責任感が求められる:体力だけでなく、冷静な判断力と責任感が必要
- 将来性も高い:ロボットでは代替しにくい職種とされ、今後も需要が見込まれる
重量鳶は、力強さと繊細さの両方が求められる専門性の高い仕事です。
鉄骨鳶(てっこつとび)とは
鉄骨鳶は、ビルや工場などの骨組みとなる鉄骨の組立作業を担当する鳶職です。
鉄骨鳶の仕事には、以下のような特徴があります。
鉄骨鳶の仕事の特徴
- かっこいいと感じられる職種:命綱一本で空を歩く姿は鳶職の花形とも言われる
- 役割分担が明確:初心者は地上での玉掛けや資材の準備から始め、経験を積むにつれて高所での組み立て作業を担当する
- 高所作業が多く危険度が高い:地上100mを超える超高層ビルの建築現場などで作業を行うこともあり、常に危険と隣り合わせ
- 体力とバランス感覚が求められる:足場の悪い場所を移動したり作業をするため、体力やバランス感覚が必要
建物の骨組みとなる部分を作るため、一つでもズレがあると建物全体に影響が出てしまいます。
鉄骨鳶は高所作業が多く、一歩間違えれば命に関わる現場の中で、冷静に作業をこなすスキルが必要です。
橋梁鳶(きょうりょうとび)とは
橋梁鳶は、橋を架ける工事において、足場や鉄骨の組立、吊り作業などを専門とする鳶職です。
地上だけでなく川や谷の上など、特殊な環境で作業する高難度な鳶職になります。
橋梁鳶の仕事には、以下のような特徴があります。
橋梁鳶の仕事の特徴
- 横方向に伸びる構造物の組み立て:縦ではなく、橋や高架道路など、横に伸びる構造物を組み立てるのが大きな特徴
- 自然環境との闘い:川の上・海上・谷間・高速道路上など、非常に厳しい環境での作業となる
- 工事規模が大きく、出張が多い:一つの現場が非常に大規模で、全国各地の現場へ長期出張することが珍しくない
- 夜間の作業も多い:高速道路の橋や鉄道橋など、交通を止められない場所では、夜間に工事をすることも多い
天候や地盤などの条件に左右されやすいため、現場判断力が極めて重要です。
インフラを支えるという社会的な意義も大きいので、橋梁鳶は誇りある仕事と言えるでしょう。
送電鳶(そうでんとび)とは
送電鳶は、電力を送るための鉄塔や送電線の建設・保守をする専門職です。
送電鳶の仕事には、以下のような特徴があります。
送電鳶の仕事の特徴
- 鉄塔上での超高所作業:地上30メートル〜100メートル以上の高所での作業で、風や天候の影響を受けやすい
- 送電線に関わる専門知識と技術が必要:電気が流れる前提で安全に作業するための知識が必要
- 他の鳶職にはない専門資格が必要:電気工事士などの資格が必要となる場合がある
- 出張が多い:日本全国の現場へ長期出張も多い職種
送電鳶は、命綱一本で鉄塔を渡るダイナミックな仕事でありながら、電気や安全に関する高度な知識とチームワークが求められる専門職です。
普通の鳶とは一線を画す職人であり、誇りと責任を持って日本のライフラインを支えています。
鳶職(とび職)と大工・足場屋の違いとは
鳶職と大工・足場屋は、どれも建設現場には欠かせない仕事です。
一見、似たような職種にみえますが、それぞれの役割や仕事内容には明確な違いがあります。
また鳶職と同じく大工も資格は不要ですが、建築大工技能士(1級、2級、3級)木造建築物の組立て等作業主任者、木造建築士、二級建築士、建築施工管理技士(1級、2級)などの資格を取得していると、キャリアアップにもつながります。
以下では2つの視点から、それぞれの職種の違いをわかりやすく解説します。
鳶職(とび職)と大工・足場屋の違い
鳶職(とび職)は「支える役割」、大工は「作る役割」
鳶職は建設現場の土台を支える役割、大工は建物そのものを形にする役割を担っています。
鳶職と大工では、現場における立ち位置も仕事内容も大きく異なります。
鳶職 | 大工 | |
---|---|---|
現場での立ち位置 | 最初に現場を作る人 | 建物を形にする人 |
主な仕事 | 足場作り・鉄骨の組み立て・クレーン作業の補助など | 家や建物の柱・床・壁などを木でつくる |
作業場所 | 高所や建物の外側 | 建物の内側・構造部分 |
特徴 | 高所での作業が中心、安全対策が重要 | 木材の加工と組み立てが中心、正確さが大事 |
鳶職は「現場の準備と安全確保を支える縁の下の力持ち」、大工は「建物を具体的に作る主役」とも言える存在です。
鳶職(とび職)と足場屋の違いは業務範囲の広さ
鳶職と足場屋は非常に似ているように見えて、業務の幅に大きな違いがあります。
足場屋は、建設現場に必要な足場を設置・解体することが主な仕事です。
一方、鳶職は足場の設置だけでなく、以下のように幅広い作業を担っています。
足場の設置以外の鳶職の作業内容
- 鉄骨の組み立て・設置
- タワークレーンの組み立て・解体
- 仮囲い、仮設階段の設置
- 重機の誘導や資材の荷揚げ
足場屋が足場専門であるのに対し、鳶職は高所作業のエキスパートとして、足場も含めた多様な業務に対応します。
また、足場屋は比較的小規模な現場でも必要とされるため、特化して仕事を請け負うケースも多いです。
一方、鳶職は大規模な建設現場で、さまざまな職人たちと連携を取りながら、安全かつ効率的に工事を進める役割を担っています。
鳶職(とび職)とは建設現場全体の安全を支える仕事
鳶職は足場を設置したり、骨組みとなる鉄骨を組み立てるなど、最初に建設現場を作る役割を担っています。
高所での作業が中心で危険が多い仕事ですが、建設現場全体の安全を支えるやりがいのある仕事です。
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