電気工事士が独立するには?独立までのステップやよくある失敗・メリットを解説

電気工事士が独立するには?独立までのステップやよくある失敗・メリットを解説 ガテン系の独立

電気工事士として独立することは可能ですが、資格を取得しただけですぐにすべての電気工事を請け負えるわけではありません。

受注する工事の種類に応じた資格・実務経験に加えて、電気工事業法に基づく登録や届出などの手続きが必要です。

一般用電気工事を行う営業所で自ら主任電気工事士となる場合など、独立後に行う工事内容や事業形態に応じて確認すべき要件が変わります。

また、独立で重要なのは法的に開業できるかどうかだけではなく、「開業資金を確保できるか」「継続して仕事を取れるか」「材料費や車両費などを差し引いて利益を残せるか」まで考えなければいけません。

そのため、独立を検討するときは受注したい工事を決める→資格・実務経験を確認する→必要な登録や許可を確認する→開業資金を準備する→取引先を確保するという順番で準備することが大切です。

この記事では、電気工事士として独立するために必要な資格・実務経験・登録、開業資金、独立後の年収や利益の考え方、仕事の取り方、失敗しやすいポイントまで解説します。

この記事でわかること
  • 電気工事士の独立で必要な条件・ステップ
  • 電気工事士の独立に必要な開業資金の目安
  • 電気工事士の独立で失敗するケース

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  1. 電気工事士は独立できる?まず確認したい3つの条件
    1. 第二種電気工事士だけでも独立できる?
    2. 第一種電気工事士を取得してから独立したほうがいい?
  2. 電気工事士が独立するまでの7ステップ
    1. 独立後に受注する電気工事の種類を決める
    2. 独立前に実務経験証明を確認する
    3. 取引先・案件獲得ルートを作る
    4. 開業資金・運転資金を確保する
    5. 工具・車両・保険を準備する
    6. 電気工事業・税務などの手続きを行う
    7. 開業して営業・施工・請求を回す
  3. 電気工事業の独立に必要な登録・届出・建設業許可
    1. 主任電気工事士になるための条件
    2. 500万円以上の電気工事では建設業許可が必要になる場合がある
  4. 電気工事士の独立にはいくら必要?開業資金をシミュレーション
    1. 独立前に生活費とは別の運転資金を確保する
  5. 独立した電気工事士はいくら稼げる?年収・売上・手取りの考え方
    1. 独立後の売上は「単価×稼働日数」だけでは決まらない
  6. 電気工事士が独立して仕事を取る方法
    1. 前職・取引先から紹介してもらう
    2. 電気工事会社の協力会社になる
    3. 工務店・リフォーム会社へ営業する
    4. 不動産管理会社・店舗会社と提携する
    5. マッチングサービスを利用する
    6. 自社サイト・Googleビジネスプロフィールで地域集客する
    7. 既存顧客から紹介・リピートを得る
  7. 電気工事士が独立して失敗する原因と対策
    1. 技術・経験不足で対応できる工事の幅が狭い
    2. 仕事を取れず売上が安定しない
    3. 元請1社に依存して売上が不安定になる
    4. 安く見積もりすぎて利益が残らない
    5. 材料費や外注費を管理できず利益を失う
    6. 入金前に資金が尽きる
    7. 施工以外の営業・請求・経理に時間を奪われる
  8. 電気工事士として独立するメリット・デメリット
  9. 電気工事士として独立するべき人・まだ独立しないほうがよい人
  10. 電気工事士の独立に関するよくある質問
    1. 第二種電気工事士を取って何年で独立できますか?
    2. 電気工事士は一人でも独立できますか?
    3. 電気工事士として独立すると年収1,000万円を目指せますか?
    4. 電気工事士の独立に第一種は必須ですか?
    5. 電気工事士の独立に建設業許可は必要ですか?
    6. 電気工事士として独立するなら何歳がベストですか?
    7. 電気工事士は独立して仕事がなくなることがありますか?
  11. まとめ|電気工事士の独立は資格より先に「仕事と利益」まで設計しよう

電気工事士は独立できる?まず確認したい3つの条件

電気工事士は独立できますが、資格を持っているだけで、すぐに電気工事業を始められるとは限りません。

独立前には、受注予定の工事を施工できる資格があるか、主任電気工事士の要件を満たしているか、電気工事業法に基づく登録や通知などが必要かを確認することが重要です。

電気工事士には第一種と第二種があり、保有資格によって施工できる電気工事の範囲が異なります。

住宅や小規模店舗などを中心とした一般用電気工作物等の工事は第一種または第二種電気工事士が対象ですが、工場やビルなどの自家用電気工作物に関する工事では第一種電気工事士などが必要になります。

電気工事士として独立する前に確認しておくべき条件 

また、法律上の条件を満たして独立できることと、独立後に安定して利益を出せることは別問題です。

独立前には「誰から仕事を受注するのか」「月にどのくらいの売上が必要なのか」「材料費や車両費を差し引いて利益が残るのか」まで考えておかなければいけません。

まずは資格や実務経験、必要な手続きを確認し、そのうえで資金や仕事の確保まで準備できているかを判断しましょう。

第二種電気工事士だけでも独立できる?

第二種電気工事士でも独立を目指すことはできますが、第二種電気工事士の資格を取得しただけで、すぐにすべての電気工事を自由に受注できるわけではありません。

第二種電気工事士が施工できるのは、主に住宅や小規模店舗などの一般用電気工作物等に関する電気工事であり、独立後に住宅のコンセントや照明、配線などの工事を中心に受注するのであれば仕事は十分あります。

一方で、独立して一般用電気工事を行う営業所には原則として主任電気工事士を置く必要がある(東京都環境局)ため、自ら主任電気工事士になるなら免状の交付を受けた後、電気工事について3年以上の実務経験を有していることなどが要件になります。

単に電気工事会社へ3年間勤務していればよいわけではなく、主任電気工事士の要件として認められる実務経験であるかを確認する必要があります。

そのため、第二種電気工事士で独立を考えている人は、まず「免状を取得した時期」「これまで経験した電気工事」「独立後に受注したい工事」を整理しておくことが大事です。

資格を取得したばかりで実務経験が少ない場合は、独立を急ぐよりも勤務先で施工経験を積みながら、見積りや材料手配、顧客対応、現場管理なども経験しておくと、独立後に対応できる仕事の幅を広げやすくなります。

現在の状況 独立までの流れ ポイント
第二種電気工事士を取得したばかり 第二種電気工事士を取得 → 勤務先で一般用電気工事の実務経験を積む → 主任電気工事士の要件を確認する  → 必要な登録・通知を行う → 独立準備を進める 資格取得直後は、すぐに独立するよりも施工経験と周辺業務の習得を優先したほうがよい
第二種電気工事士を取得後、3年以上の実務経験がある 第二種電気工事士+3年以上の実務経験を確認 → 主任電気工事士の要件を満たしているか確認 → 独立後に受注する工事を決める → 電気工事業の登録・通知・仕事・資金・工具の準備をする →  独立する 「3年以上」は単なる在籍年数ではなく、要件として認められる実務経験か確認することが重要
第二種電気工事士で住宅・小規模店舗中心に独立したい 第二種電気工事士の施工範囲を確認 → 主任電気工事士の要件を確認する → 登録・通知などの手続きを行う → 地域の工務店・管理会社・個人顧客など営業先を確保する → 独立する 一般用電気工作物等を中心に受注するなら、第二種でも独立を目指しやすい
第二種電気工事士だが、将来的に工場・ビルなども受注したい 第二種電気工事士で経験を積む →  第一種電気工事士の取得を検討する → 必要な資格・実務経験を満たす → 受注範囲に応じた登録や手続きを行う → 取引先を広げて独立する 工場・ビルなどへ仕事を広げたい場合は、第二種のまま独立するより第一種取得を先に検討したほうがよい場合がある
実務経験はあるが、独立後の仕事や資金に不安がある 実務経験・資格要件を確認 →  勤務先や取引先経由で仕事の見込みを作る → 開業資金・工具・車両・運転資金を準備する → 登録・通知を行う → 売上見込みが立ってから独立する 法的に独立可能でも、仕事・資金・工具が不足していると経営が不安定になりやすい

第一種電気工事士を取得してから独立したほうがいい?

電気工事士として独立するために、第一種電気工事士の取得が必須とは限りません。

住宅などの一般用電気工作物等を中心に受注するのであれば、第二種電気工事士でも施工できる工事があります。

一方、独立後にビルや工場などへ受注範囲を広げたい場合は、第一種電気工事士の取得をおすすめします。

なぜなら、第一種電気工事士は、第二種電気工事士よりも施工できる電気工事の範囲が広いため、独立後の案件選択肢を増やしやすくなるためです。

資格 主な工事範囲 独立時に考えること
第二種電気工事士 住宅・小規模店舗などの一般用電気工作物等 住宅工事などを中心に独立する場合の選択肢になる
第一種電気工事士 一般用電気工作物等に加え、一定範囲の自家用電気工作物 ビル・工場などへ受注範囲を広げたい場合に検討する
認定電気工事従事者など 認定内容に応じた一定範囲の工事 独立後に扱いたい設備や工事内容から必要性を判断する

また、独立後の事業内容によっては、第一種・第二種電気工事士以外にも、認定電気工事従事者や電気工事施工管理技士などの資格が役立ちます。

第一種電気工事士を取得してからでなければ独立できないと考えるのではなく、独立後に「どの工事を、誰から受注するのか」をイメージし必要な資格や登録を確認することが大事です。

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電気工事士が独立するまでの7ステップ

電気工事士として独立するなら、「資格を取ったら会社を辞める」という順番ではなく、独立後にどの工事を受注するかを決めたうえで、資格・実務経験・取引先・資金・工具・手続きを順番に整えていくことが重要です。

特に、独立直後から安定して仕事を確保するためには、退職する前に受注先や案件獲得ルートまで具体化しておく必要があります。

独立までの基本的な流れについてまとめると以下の通りとなります。

電気工事士が独立するまでの7ステップ

独立後に受注する電気工事の種類を決める

最初に決めるべきなのは、独立後にどの電気工事を中心に受注するかです。

電気工事には、戸建住宅や集合住宅の配線・照明・コンセント工事のほか、店舗改修、ビル・工場、エアコン、太陽光発電・蓄電池、EV充電設備、新築工事の下請け、既存設備の改修・メンテナンスなど幅広い種類があります。

独立直後から「電気工事なら何でも受ける」と考えるより、自分の経験や保有資格、工具、取引先に合った分野を絞るほうが案件を効率的に受注しやすくなります。

主な工事分野 主な顧客・取引先 独立前に確認すること
戸建住宅 工務店・リフォーム会社・個人 住宅配線やコンセントなどの経験
集合住宅 管理会社・工務店 共用部・住戸内工事への対応力
店舗 内装会社・店舗事業者 照明・電源・改修工事の経験
工場・ビル 法人・設備会社 必要資格と施工できる工事範囲
エアコン・設備 個人・法人 工具・車両・関連工事への対応
太陽光・蓄電池・EV 販売会社・施工会社 設備ごとの必要資格・知識

仕事の種類によって必要資格、使用する工具、材料費、受注単価、営業先が変わります。

そのため、「どの分野なら施工経験が豊富か」「どの取引先から案件を確保できるか」「必要な資格を持っているか」を整理して、独立後の主力工事を決めましょう。

独立前に実務経験証明を確認する

第二種電気工事士として独立を考えている場合は、退職する前に実務経験の内容と証明方法を確認しておきましょう。

たとえば一般用電気工事を行う営業所で第二種電気工事士が主任電気工事士になる場合、免状交付後3年以上の電気工事に関する実務経験が必要です。

経済産業省の登録申請案内でも、主任電気工事士等について実務経験を証する書面が求められています。

電気工事業の登録申請

ただし、会社に3年以上在籍しただけで、すべての期間が自動的に実務経験として認められるとは限りません。

確認すること 内容
免状交付日 第二種電気工事士免状を取得した時期
経験期間 免状交付後にどれだけ実務経験があるか
経験内容 実務経験として認められる電気工事か
証明方法 誰にどの書類で証明してもらうか
申請先 実際に提出する行政機関と必要書類

退職した後では、以前の勤務先へ証明を依頼しにくくなるケースも考えられます。

独立を決めたら退職届を出す前に、申請先へ「どの経験が実務経験として認められるのか」「どの書類が必要なのか」を確認し、勤務先へ証明を依頼できる状態にしておきましょう。

取引先・案件獲得ルートを作る

資格や実務経験を満たしていても、独立後に仕事を受注できなければ売上は発生しません。

そのため、独立を決めてから営業を始めるのではなく、退職前から案件獲得ルートを作っておくことが重要です。

主な案件獲得先としては、以前の勤務先や同業者からの応援依頼、工務店、リフォーム会社、内装会社、不動産管理会社、設備会社などがあります。

案件獲得ルート 特徴 独立前に確認すること
前職・同業者 独立直後から仕事につながりやすい 継続して発注されるか
工務店 住宅工事を獲得しやすい 単価・支払条件
リフォーム会社 改修案件を継続受注しやすい 工事内容・対応エリア
管理会社 修繕・交換案件が発生しやすい 緊急対応の有無
設備会社 法人案件や応援工事につながる 必要資格・経験
一般顧客 元請として受注できる 集客・見積り・保証体制

さらに、将来的には、自社サイトやGoogleビジネスプロフィールなどから個人顧客を獲得するのもひとつです。

案件数、単価、支払日、材料費の負担、継続性まで確認し、できれば複数の取引先を確保してから独立することが重要です。

開業資金・運転資金を確保する

独立するときは、工具や車両を購入するための開業資金だけでなく、売上が入金されるまで事業を継続するための運転資金も必要です。

電気工事では、案件によって材料を先に仕入れ、工事完了後に請求し、さらに一定期間経過してから入金される場合があります。

そのため、「開業できるだけのお金」ではなく、「入金まで事業を続けられるお金」を準備しておくようにしましょう。

電気工事士の独立で必要な資金の例

  • 開業資金:工具・測定器・車両・PCなど
  • 材料資金:配線・器具・部材などの仕入れ
  • 固定費:駐車場・通信費・ソフト・保険など
  • 運転資金:入金までの事業費用
  • 生活資金:家賃・食費など生活に必要な費用

独立前には、月々必要になる固定費と生活費を算出し、売上が少ない期間でも資金不足にならないよう準備しておくことも大切です。

特に材料費を自分で立て替える仕事を多く受注する場合は、売上金額だけでなく入金までの期間も資金計画に入れる必要があります。

工具・車両・保険を準備する

独立後に受注する工事を決めたら、その工事を安全かつ効率的に行うための工具・車両・保険を準備します。

必要な設備は仕事内容によって異なります。

住宅工事で使う工具と、ビルや工場、エアコン、太陽光設備などで必要になる工具は同じではないため注意が必要です。

電気工事士の独立で必要な工具・車両・保険

  • 工具:電動工具・手工具など
  • 測定器:絶縁抵抗計・検電器など必要な機器
  • 車両:工具や材料を運搬できるか
  • 安全装備:ヘルメット・墜落制止用器具など
  • 損害保険:施工ミスや事故への補償
  • 労災:一人親方としての特別加入を検討

一人親方など労働者ではない人は、通常の労災保険とは扱いが異なりますが、一定の要件を満たせば特別加入制度を利用できます。

厚生労働省でも建設工事に従事する一人親方についても労災保険の特別加入制度を案内しています。

必要な工具を一度にすべて買い揃えると資金負担が大きくなるため、まず受注する工事に必要なものを優先して準備しましょう。

電気工事業・税務などの手続きを行う

独立して電気工事業を営む場合は、電気工事士の資格だけでなく、事業者として必要な行政・税務手続きを確認します。

経済産業省は、電気工事業を営む場合について電気工事業法に基づく登録申請を案内しており、登録時には主任電気工事士等の実務経験を証する書面なども必要になります。

また個人事業主として開業する場合は、税務上の手続きも求められます。

国税庁では「個人事業の開業・廃業等届出書」や青色申告承認申請書などの手続きを案内しています。

現在、開業届は原則として開業した年分の所得税の確定申告期限までに提出する扱いとなり、青色申告を希望する場合には別途提出期限があります。

手続き 確認すること 注意点
電気工事業 登録・通知など自分に必要な区分 扱う電気工事の種類や建設業許可の有無によって手続き区分が変わるため、自己判断せず申請先へ確認する
主任電気工事士 資格・実務経験・証明書類 第二種電気工事士の場合、単なる勤続年数ではなく、要件として認められる実務経験か確認する
建設業許可 受注する工事金額から必要性を確認 電気工事業法上の登録等とは別制度のため、建設業許可を取得しても電気工事業の手続きが不要になるとは限らない
税務 開業届・青色申告など 開業届と青色申告では提出書類や期限が異なるため、開業時期に合わせて確認する
労災・保険 一人親方特別加入や賠償保険 一人親方は通常の労災保険とは扱いが異なるため、特別加入の要件を確認する。施工事故に備えた賠償保険も検討する
インボイス 取引先との関係から登録要否を検討 登録が一律に必須とは限らない。法人取引の有無や取引先からの登録要請、消費税負担まで踏まえて判断する

なお、建築一式工事以外では、原則として1件の請負代金が500万円未満の軽微な建設工事のみを請け負う場合は建設業許可を必要としません。

工事規模を拡大する予定がある場合は、電気工事業法上の手続きとは別に建設業許可についても確認しましょう。

開業して営業・施工・請求を回す

必要な資格・資金・工具・手続きが揃ったら開業します。

ただし、独立後は電気工事を施工するだけでは事業は回りません。

一人で独立する場合は、営業、現地調査、見積り、材料発注、施工、写真管理、請求、入金確認、経理まで自分で対応することになります。

業務 主な内容 ポイント
営業 新規取引先・既存顧客への提案 1社だけに依存せず、工務店・管理会社・同業者・一般顧客など複数の案件獲得ルートを持つ
現地調査 工事内容・施工条件の確認 配線経路、電源容量、作業スペース、必要材料などを事前に確認し、追加工事や手戻りを防ぐ
見積り 材料費・人工・経費・利益を計算 材料費と作業時間だけで決めず、移動費・駐車場代・外注費なども含めて利益が残る価格にする
施工 安全・品質を確保して工事する 納期を優先して安全確認を省略せず、施工後の点検や記録まで含めて品質を管理する
請求 請求書発行・支払条件確認 請求日・支払期限・振込条件を事前に確認し、工事完了後は速やかに請求する
入金管理 売掛金の回収状況を確認 売上だけでなく入金日まで管理し、未入金や入金遅延を早めに把握する
経理 売上・仕入れ・経費を記帳 領収書や請求書をため込まず定期的に記帳し、案件ごとの利益や毎月の資金状況を確認する

個人事業主には記帳や帳簿書類の保存が求められるため、開業後にまとめて処理するのではなく、日頃から売上や経費を記録する体制を作っておきましょう。

特に独立直後は、「工事が入っている=経営が順調」と判断すると危険です。

忙しくても安い単価で受注していたり、材料費や外注費を把握できていなかったりすると利益が残りません。

案件ごとに売上・材料費・外注費・その他の経費を確認し、利益が残る受注を続けられる状態を作ることが独立後の重要なポイントです。

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電気工事業の独立に必要な登録・届出・建設業許可

電気工事士として独立する場合は、電気工事士の資格だけでなく、電気工事業法に基づく登録・通知などの手続きも必要です。

さらに、一定規模以上の工事を請け負う場合は、建設業法に基づく建設業許可も関係します。

ここで重要なのは、電気工事士資格、電気工事業法上の手続き、建設業許可はそれぞれ別の制度だという点です。

経済産業省も、電気工事業を営む場合は電気工事業法に基づく登録等が必要であり、建設業許可を取得している場合でも別途届出等が必要と案内しています。

独立前は、次のように自分がどの区分に該当するかをチェックしてみてください。

建設業許可 主な工事区分 電気工事業法上の区分 主な確認ポイント
なし 一般用電気工作物等を扱う 登録電気工事業者 主任電気工事士の設置や登録手続きを確認
なし 自家用電気工作物のみ 通知電気工事業者 事業開始時の通知が必要
あり 一般用電気工作物等を扱う みなし登録電気工事業者 建設業許可取得後も電気工事業開始の届出が必要
あり 自家用電気工作物のみ みなし通知電気工事業者 建設業許可取得後も電気工事業開始の通知が必要

経済産業省では、自家用電気工作物に係る電気工事だけを行う場合を「通知電気工事業者」、建設業許可を持つ事業者が一般用電気工作物等を扱う場合を「みなし登録電気工事業者」、自家用電気工作物のみを扱う場合を「みなし通知電気工事業者」と整理しています。

電気工事業者の違い

また、登録電気工事業者には更新がありますが、通知電気工事業者やみなし通知電気工事業者は更新不要とされています。

ただし、登録・通知した内容に変更が生じた場合は、変更手続きが必要になるっケースがあるため注意が必要です。(経済産業省)

申請先も一律に「都道府県知事」と決まっているわけではありません。

営業所の所在地や営業区域などによって都道府県知事、産業保安監督部、経済産業大臣など申請先が変わるため、独立する地域と営業範囲を決めた段階で経済産業省の公式案内を確認しましょう。

主任電気工事士になるための条件

一般用電気工作物等に関する電気工事を行う営業所では、営業所ごとに主任電気工事士を置かなければいけません。

主任電気工事士は、一般用電気工事の作業を適切に管理する役割を担います。

経済産業省の関東東北産業保安監督部によると、主任電気工事士になれる主なケースは、第一種電気工事士、または第二種電気工事士免状の交付を受けた後に電気工事について3年以上の実務経験を持つ人と記載されています。

ケース 主任電気工事士になるための確認事項
第一種電気工事士 第一種電気工事士免状など必要書類を確認
第二種電気工事士 免状交付後3年以上の電気工事に関する実務経験を確認
自分が主任電気工事士になる 自身の資格・実務経験が要件を満たすか確認
従業員等を主任電気工事士にする 対象者の資格・実務経験・雇用関係などを確認

第二種電気工事士の場合に注意したいのは、「会社に3年間勤めた」という事実だけで判断しないことです。

経済産業省の関東東北産業保安監督部によると、主任電気工事士になるためには、免状交付後に電気工事について3年以上の実務経験を有することが要件となっています。

申請時には、第二種電気工事士について主任電気工事士等実務経験証明書などが必要になる場合があります。

経済産業省の手引きでも、第二種電気工事士について実務経験を証する書面の添付が案内されています。

そのため、独立を予定している場合は退職してから証明書の準備を始めるのではなく、在職中に自分の経験が要件を満たすかを確認し、必要であれば勤務先へ実務経験証明を依頼できるよう準備しておくことが重要です。

500万円以上の電気工事では建設業許可が必要になる場合がある

電気工事業法上の登録・通知とは別に、請け負う工事の規模によっては建設業許可も必要になります。

国土交通省によると、建築一式工事以外の建設工事では、1件の請負代金が500万円未満の工事は「軽微な建設工事」とされており、軽微な建設工事のみを請け負う場合は必ずしも建設業許可を取得する必要はないときさ入れています。(金額には消費税と地方消費税を含みます。)

1件の請負代金 建設業許可の考え方 注意点
500万円未満 軽微な建設工事として、原則として建設業許可なしでも請負可能 電気工事業法上の登録・通知等は別途必要
500万円以上 原則として電気工事業の建設業許可が必要 許可要件を満たしてから受注する
建設業許可取得済み 規模に応じた工事を受注可能 電気工事業法上の届出・通知等も確認する

特に間違えやすいのが「500万円以下」ではなく「500万円未満」である点です。

500万円ちょうどの工事は軽微な建設工事の基準には含まれず、この500万円には消費税・地方消費税も含まれます。

さらに、建設業許可を取得したからといって、電気工事業法上の手続きが不要になるわけではないため注意が必要です。

建設業許可を取得した事業者が一般用電気工作物等に関する電気工事を行う場合は、みなし登録電気工事業者として開始届出を行う必要があります。

自家用電気工作物のみを扱う場合も、建設業許可を取得していれば、みなし通知電気工事業者として通知が必要です。

独立時は「電気工事士の資格を持っているから受注できる」「建設業許可を取ったから手続きは完了」と判断せず、受注する工事の種類・金額・営業所の所在地を整理したうえで電気工事業法と建設業法の両方から必要な手続きを確認しましょう。

電気工事士の独立にはいくら必要?開業資金をシミュレーション

電気工事士として独立するために必要な金額は、受注する工事の種類や、車両・工具をすでに持っているかによって大きく変わります。

そのため、「開業には○百万円必要」と一律に考えるのではなく、初期費用と運転資金を分けて、自分の事業内容に合わせて計算することが重要です。

初期費用には、車両や電動工具、測定器、脚立・はしご、作業着・安全具など、工事を始めるために必要な設備が含まれます。さ

らに、見積りや請求、経理を行うためのPC・スマートフォン、会計・見積りソフト、電気工事業の登録に関する費用、ホームページや名刺などの営業費用も想定しておきましょう。

一方、独立後に特に注意したいのが運転資金です。

工事を受注しても、その日のうちに売上が入金されるとは限りません。

ほかにも、ガソリン代、駐車場代、車両維持費、通信費、保険料、外注費などの事業費用、自分自身の生活費や税金・社会保険料も必要です。

独立資金を考えるときは、「開業できる金額」ではなく、「売上が入金されるまで資金を切らさず事業を続けられる金額」を基準にしましょう。

費用 必須度 金額の考え方 削減・確認方法
車両 購入・リース費用を実額で確認 中古車・リース・現在の車両を比較する
工具・測定器 受注する工事に必要なものを積み上げる 保有工具を棚卸しし、不足分だけ購入する
材料費 受注する案件によって変動 仕入条件・支払条件を事前に確認する
登録・事務費 必要な登録・ソフト・通信環境などを計算 不要な固定サービスを減らす
運転資金 数か月分の固定費・事業費を試算 毎月の固定費を把握して余裕を持たせる
生活資金 家賃・食費・家族の生活費などを計算 事業資金とは別口で確保する

特に、車両や工具をすでに所有している人と、独立時に一式を購入する人では必要な初期費用が大きく異なります。

まずは現在持っている設備を棚卸しし、独立後に受注する工事に本当に必要なものだけを洗い出すことが大切です。

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独立前に生活費とは別の運転資金を確保する

独立前には、工具や車両を購入するための開業資金だけでなく、生活費とは別に運転資金を確保しておかなければいけません。

請求書を発行しても即日入金されるとは限らず、取引先によっては翌月末など一定期間後に支払われることもあります。

資金の流れは、次のように考えるとわかりやすくなります。

段階 お金の動き 注意点
材料購入 先に支払いが発生 工事代金より先に現金が減る場合がある
施工 人件費・交通費などが発生 売上はまだ入金されていない
請求 請求書を発行 支払条件・締日・支払日を確認する
入金待ち 固定費などの支払いが続く 手元資金が不足しないようにする
入金 売上代金を受け取る 次の材料費や固定費へ回す

独立直後は売上が安定しないケースも珍しくなく、案件が少ない月でも駐車場代、通信費、保険、車両費などの固定費は発生します。

したがって、生活費と事業資金はできるだけ分けて管理しておくことがポイントです。

事業用口座を用意して、材料費やガソリン代などの支出を分けておくと、毎月いくら事業資金が必要なのか把握しやすくなります。

また、独立前に取引予定の会社がある場合は、「請求締日はいつか」「支払日はいつか」「材料費はどちらが負担するのか」まで確認しておきましょう。

独立した電気工事士はいくら稼げる?年収・売上・手取りの考え方

独立した電気工事士の収入は、受注単価や案件数、元請・下請の割合、材料費、外注費などによって大きく変わるため、一律に「年収○万円」とは言えません。

特に注意したいのが、売上と年収を同じものとして考えないことです。

例えば年間売上が1,000万円あったとしても、その1,000万円がすべて自分の収入になるわけではありません。

そこから材料費、外注費、車両費、工具費、保険料、通信費などの経費を差し引いた金額が事業所得のベースになります。

独立後の収入は、次の流れで考えると整理しやすくなります。

電気工事士の独立後の収入の内訳

  • 売上:工事代金・人工代・材料代など
  • 材料費:ケーブル・器具・部材など
  • 外注費:応援・協力会社への支払い
  • 車両・工具費:車両維持費・工具購入費など
  • その他経費:保険・通信・駐車場・会計ソフトなど
  • 事業所得:売上から必要経費を差し引いた金額
  • 税・社会保険:所得税・住民税・社会保険料など
  • 可処分所得:税金等を支払った後に生活へ使える金額

つまり、「売上1,000万円=年収1,000万円」ではありません。

独立後にいくら稼げるかを考えるときは、売上額だけを見るのではなく、最終的にどれだけ利益が残るかを見る必要があります。

参考として、厚生労働省が示すjob tagでは、電気工事士の全国賃金は年収628.1万円、労働時間は月163時間、令和6年度の求人賃金は月27.6万円、有効求人倍率は3.8倍とされています。

ただし、これらは会社員なども含む電気工事士全体の統計であり、独立した一人親方だけを対象とした年収ではありません。

独立後は売上を増やせる可能性がある一方、会社員時代には会社が負担していた車両、工具、保険、営業、経理などのコストを自分で負担しなければいけない点に注意が必要です。

独立後の売上は「単価×稼働日数」だけでは決まらない

独立した電気工事士の売上は、単純に「1日の単価×働いた日数」だけで決まるわけではありません。

電気工事の受注方法には、応援・常用、下請、元請、一般顧客からの直接受注などがあり、それぞれ売上の作り方や利益率が異なります。

受注方法 売上の作り方 メリット 注意点
応援・常用 日当×稼働日数 月の売上を予測しやすい 稼働日数と日当によって売上上限が決まりやすい
下請 工事単価・請負金額 継続案件につながりやすい 特定の元請への依存や価格交渉に注意
元請 材料費+工事費など 自分で価格を設計しやすく粗利を作りやすい 営業・見積り・保証・顧客対応が必要
一般顧客 工事ごとに料金設定 直接受注のため単価を調整しやすい 集客・問い合わせ対応・アフターフォローが必要

例えば、応援・常用で働く場合は日当と稼働日数から売上を計算しやすいですが、働ける日数には限界があります。

下請では継続的な仕事を得やすい反面、元請の発注量や単価に影響を受けやすくなります。

特定の1社だけに依存すると、その会社からの発注が減っただけで売上が大きく落ちるリスクもあります。

一方、元請や一般顧客から直接受注する場合は、自分で見積りを作成できるため利益を確保しやすくなる可能性があります。

ただし、営業、現地調査、見積り、施工、請求、保証対応まで自分で行う必要があります。

独立後は、単価だけで案件を選ぶのではなく、「材料費や外注費を差し引いていくら残るのか」「営業や移動に何時間かかるのか」まで含めて判断しましょう。

電気工事士が独立して仕事を取る方法

電気工事士として独立する場合、資格や施工技術だけでなく、継続的に案件を獲得する仕組みを作ることが重要です。

独立後に仕事がなくなるリスクを避けるには、退職してから営業を始めるのではなく、会社員のうちから取引先や案件獲得ルートを準備しておきましょう。

電気工事の仕事を取る方法には、前職や同業者からの紹介、工務店やリフォーム会社との提携、管理会社への営業、一般顧客からの直接受注などがあります。

それぞれ、案件の取りやすさ、単価、利益率、継続性、営業にかかる時間が異なるため、自分の経験や目指す事業規模に合った方法を選ぶことが大切です。

独立直後は、1つの集客方法だけに依存するのではなく、複数の受注ルートを持つことで売上の安定につながります。

集客方法 立ち上がり 単価 継続性 向いている人
前職・取引先から紹介 ◎ 早い ○ 案件による △ 紹介元に左右される 既存の人脈がある人
電気工事会社の協力会社になる ◎ 早い △~○ ◎ 継続案件につながりやすい 施工力を活かしたい人
工務店・リフォーム会社へ営業 ○ 徐々に獲得 ◎ 継続受注を狙いやすい 住宅工事経験がある人
不動産管理会社・店舗会社と提携 ◎ 修繕案件などにつながる 改修工事に対応できる人
マッチングサービスを利用 △ 案件量が安定しない場合がある 独立初期で実績を作りたい人
自社サイト・Googleビジネスプロフィール △ 時間が必要 ◎ 資産化しやすい 地域密着で展開したい人
既存顧客から紹介・リピート 丁寧な対応で信頼を積み上げられる人

前職・取引先から紹介してもらう

独立直後に最も仕事につながりやすい方法の一つが、これまで働いていた会社や取引先から案件を紹介してもらうことです。

電気工事業界では、工事量が多い時期や人手が不足している時に、協力業者や応援業者を探している会社があります。

これまでの施工実績や人柄、対応力を理解している相手であれば、独立後でも仕事につながる可能性が高いです。

ただし、「独立したら仕事を回してもらえる」という口約束だけで退職するのは避け、以下のポイントを事前に明確にしておきましょう。

確認項目 確認内容
案件数 月に何件程度の依頼が見込めるか
単価 1日単価・工事単価はいくらか
支払条件 締日・支払日・材料負担の有無
継続性 一時的な応援なのか継続案件なのか
対応範囲 エリア・工事内容・緊急対応の有無

紹介案件は独立初期の売上作りに有効ですが、1社だけに依存すると、その会社の発注量や経営状況によって売上が大きく変動する可能性があります。

電気工事会社の協力会社になる

独立後の案件を安定させる方法として、他の電気工事会社の協力会社になる方法が挙げられます。

なぜなら、大手の電気工事会社や設備会社では、自社だけでは対応しきれない案件を外部の協力業者へ依頼することがあるためです。

特に、住宅設備、店舗改修、設備更新、保守工事などは継続的な需要があります。

メリット 注意点
営業に時間をかけず案件を確保しやすい 単価交渉力が低くなる場合がある
継続案件につながる可能性がある 特定会社への依存に注意
施工に集中しやすい 支払条件を確認する必要がある

協力会社として長く付き合うには、施工品質だけでなく、報告の早さ、現場対応、約束した納期を守ることも重要です。

工務店・リフォーム会社へ営業する

住宅関連の電気工事を中心に独立する場合は、工務店やリフォーム会社との関係作りが有効です。

住宅リフォームでは、照明交換、コンセント増設、分電盤交換、配線工事など、電気工事が必要になる場面が多くあります。

営業時には、単に「仕事をください」と伝えるのではなく、以下の内容を明確に伝えることで依頼につながりやすくなります。

営業時のポイント

  • 対応できる工事内容
  • 施工可能なエリア
  • 対応できる時間帯
  • 過去の施工経験
  • 保有資格

不動産管理会社・店舗会社と提携する

不動産管理会社や店舗運営会社では、設備故障や修繕工事が定期的に発生するため、事前に提携しておくと収入が安定しやすいでしょう。

例えば、以下の分野は継続的な案件につながりやすいためねらい目です。

電気工事の継続的な案件につながりやすい分野

  • 照明設備の交換
  • コンセント修理
  • エアコン関連工事
  • 入退去時の原状回復工事

ただし、緊急対応を求められるケースもあるため、対応可能な時間帯やエリアを事前に決めておくことをおすすめします。

マッチングサービスを利用する

独立初期に実績や顧客を増やす方法として、工事業者向けのマッチングサービスを利用する方法もあります。

ただしマッチングサービスは案件を探しやすい一方で、案件ごとの手数料や競争状況、単価設定には注意が必要です。

不当な取引をしないようにするためにも以下のポイントを明らかにしてから受注する様にしましょう。

確認項目 ポイント
手数料 売上からどの程度差し引かれるか
案件単価 経費を引いて利益が残るか
対応エリア 移動時間や交通費を考慮する
継続性 単発案件だけにならないか

マッチングサービスだけに依存せず、紹介・営業・リピートなど複数の集客方法と組み合わせるといいでしょう。

自社サイト・Googleビジネスプロフィールで地域集客する

長期的に地域で仕事を増やしたい場合は、自社サイトやGoogleビジネスプロフィールなどを活用した集客もひとつの方法です。

特に個人宅向けの工事では、「地域名+電気工事」「エアコン工事」「コンセント増設」などで検索する顧客から問い合わせを獲得できる可能性があります。

ただし、Web集客は公開してすぐ問い合わせが増えるものではありません。

プロフィールに掲載する内容(定期的な更新が必要)

  • 施工事例
  • 対応地域
  • 料金目安
  • 資格情報
  • 口コミなど

既存顧客から紹介・リピートを得る

独立後に安定した売上を作るには、新規顧客だけでなく既存顧客からのリピートや紹介も重要です。

電気工事は、一度依頼した顧客が別の工事を依頼したり、知人を紹介したりするケースも少なくありません。

そのため、以下の技術以外の対応力も重要になります。

電気工事士が技術以外で求められるもの

  • 施工後の説明
  • 連絡の早さ
  • 見積りの分かりやすさ
  • 追加費用の説明
  • アフターフォロー

独立後の経営では、「どれだけ工事ができるか」だけではなく、「継続して依頼される仕組みを作れるか」が売上の安定につながります。

電気工事士が独立して失敗する原因と対策

電気工事士として独立すると、会社員時代より収入を増やせる可能性がある一方で、施工技術だけでは事業を安定させることはできません。

独立後に失敗する原因は、「工事ができない」ことだけではなく、仕事の獲得、価格設定、資金管理、経理など経営面の準備不足によるものも多くあります。

特に注意したいのは、忙しく仕事をしているのに利益が残らないケースです。

独立前には、施工スキルだけでなく、営業・見積り・資金管理まで含めて準備しておくことが重要です。

失敗 起こること 独立前の対策
安値受注 忙しいのに利益が残らない 材料費・人工・経費・必要利益を含めて見積りする
1社依存 元請の発注停止で売上が減る 複数の取引先や集客経路を作る
資金不足 材料購入や経費支払いができない 入金まで耐えられる運転資金を確保する
経理不足 本当の利益や資金状況が把握できない 月次で売上・経費・利益を確認する

技術・経験不足で対応できる工事の幅が狭い

独立後によくある失敗の一つが、施工経験や判断力が不足した状態で独立してしまうことです。

会社員時代は、現場管理者や先輩職人に確認しながら進められた作業でも、独立すると施工方法の判断、材料選定、トラブル対応まで自分で行う必要があります。

特に以下のような経験が不足している場合、独立後に対応できる案件が限られる可能性があります。

不足しやすい経験 独立後に起こる問題 対策
現場判断 追加工事や施工変更に対応できない 様々な現場経験を積む
見積り経験 利益が残らない価格設定になる 積算や原価計算を学ぶ
材料選定 不足・発注ミスが発生する 使用材料や仕入先を把握する
トラブル対応 顧客対応に時間がかかる 施工後の問題対応も経験する

独立前には、単に工事を施工するだけでなく、現場調査、見積り、材料発注、顧客への説明まで経験しておくことが重要です。

仕事を取れず売上が安定しない

独立すると、自分で案件を獲得しなければ売上は発生しません。

会社員時代は会社が営業活動を行い、受注した仕事を担当する形が一般的ですが、独立後は施工だけでなく営業活動も自分の仕事になります。

失敗しやすいケースは、「技術があれば自然に仕事が来る」と考えてしまうことです。

実際には、施工品質だけでなく、取引先との関係作りや営業活動を継続する必要があります。

原因 起こること 対策
営業不足 独立直後から案件が減る 退職前から取引先候補を作る
紹介だけに依存 紹介が止まると売上低下 複数の集客経路を持つ
実績不足 新規取引先から選ばれにくい 施工事例や対応実績を整理する
顧客管理不足 リピートにつながらない 完工後のフォローを行う

対策としては、前職からの紹介だけでなく、工務店、リフォーム会社、管理会社、設備会社など複数の営業先を確保しておくことが重要です。

元請1社に依存して売上が不安定になる

独立直後は、以前勤務していた会社や知り合いの元請会社から仕事をもらうケースが一般的です。

ただし、1社だけに売上を依存すると、その会社の経営状況や発注量によって自分の収入も大きく変動するため1社に依存するのはおすすめしません。

例えば、元請会社の案件減少、単価変更、取引条件の変更などによって、急に仕事量が減る可能性があります。

理想は、協力会社、工務店、管理会社、一般顧客など複数の受注ルートを持つことです。

独立後も営業活動を続け、特定の1社がなくても事業を継続できる状態を作りましょう。

確認項目 1社依存している場合のリスク 独立前・独立後の対策
売上割合 元請1社の発注量が減ると売上が大きく減少する 複数の取引先を確保し、1社への依存度を下げる
案件獲得 紹介や依頼がなくなると新規案件を探す必要がある 工務店・管理会社・協力会社・一般顧客など複数の受注ルートを作る
単価交渉 仕事を失う不安から、低単価や不利な条件を受けやすい 複数の取引先を持ち、適正な価格交渉ができる状態を作る
継続性 元請の経営状況や方針変更の影響を直接受ける 一時的な案件ではなく、継続的に依頼が見込める取引先を増やす
支払条件 入金サイトや材料負担などを一方的に決められる可能性がある 事前に請求締日・支払日・材料費負担の条件を確認する
営業活動 安定している時期に営業を止め、案件不足になる 独立後も継続的に新規営業や顧客開拓を行う

安く見積もりすぎて利益が残らない

独立したばかりの電気工事士は、仕事を失いたくないという理由から、相場より安い金額で受注してしまうケースがあります。

しかし、安値で受注すると忙しく働いていても利益が残らず、事業を継続できなくなる可能性があります。

見積りでは、工事費だけでなく以下の費用を含めて考える必要があります。

見積りで含めるべき費用

  • 材料費:ケーブル・器具・部材など
  • 人工:作業時間・人数
  • 移動費:ガソリン・高速代など
  • 車両費:維持費・リース費用
  • 諸経緯費:保険・通信費・工具費など
  • 利益:事業継続に必要な利益

「仕事があるから安心」ではなく、「利益が残る仕事か」を判断するようにしましょう。

また、追加工事が発生した場合の費用負担についても、事前に顧客へ説明できる仕組みを作っておくと安心です。

材料費や外注費を管理できず利益を失う

電気工事では、材料費や外注費の管理不足によって利益が減少するケースがあります。

特に材工込みで請け負う場合、材料価格の変動や発注ミスが利益に大きく影響します。

材料費や外注費の管理不足によって利益が減少するケース

独立後は、工事ごとに売上だけを見るのではなく、「その案件でいくら利益が残ったか」を確認する習慣が必要です。

入金前に資金が尽きる

独立後の資金不足は、売上がないことだけが原因ではありません。

工事を受注していても、材料費や外注費を先に支払い、入金まで期間が空くことで資金が不足するケースがあります。

特に独立直後は、売上が安定するまで時間がかかる可能性があるため、運転資金を確保しておくことが重要です。

資金不足の原因 対策
材料費の先払い 支払条件や仕入条件を確認する
入金サイトが長い 契約前に支払日を確認する
固定費が高い 車両費・事務費を見直す
売上変動が大きい 複数の案件獲得先を作る

独立前には、最低限「数か月売上が少なくても事業と生活を維持できる資金」を準備しておくと安心でしょう。

施工以外の営業・請求・経理に時間を奪われる

独立すると、電気工事の施工だけではなく、営業、見積り、請求、入金確認、経理なども自分で対応する必要があります。

施工技術が高くても、事務作業や経営管理ができなければ、利益を残すことは難しくなります。

業務 よくある問題 対策
営業 案件不足になる 定期的に新規営業を行う
見積り 利益計算が甘くなる 原価管理を行う
請求 入金漏れが発生する 請求管理表を作る
経理 利益が把握できない 月次で数字を確認する

対策としては、開業時から会計ソフトや請求管理ツールを活用し、施工以外の業務を効率化することが有効です。

また、忙しくなった場合は、税理士や事務代行サービスを利用するなど、自分が施工に集中できる環境を作ることも検討しましょう。

電気工事士とは?仕事内容や第一種と第二種の違い・向いている人の特徴を解説

電気工事士として独立するメリット・デメリット

電気工事士として独立すると、自分で仕事量や働き方を決められる一方で、会社員時代には会社が担っていた営業・経理・リスク管理なども自分で対応する必要があります。

独立は「自由になる」「収入が増える」というメリットだけではありません。案件獲得、資金管理、顧客対応まで含めて事業を運営する必要があるため、自分に合った働き方なのかを事前に判断することが重要です。

特に注意したいのは、独立によって自由な時間が必ず増えるわけではないという点です。

施工以外にも、見積り作成、材料発注、請求書発行、入金確認、営業活動などの業務が発生することを頭に入れておきましょう。

メリット デメリット 対策
仕事を選べる 案件を自分で獲得する必要がある 工務店・管理会社・協力会社・既存顧客など複数の受注ルートを作り、独立前から営業活動を行う
売上を伸ばせる可能性がある 収入が月によって変動する可能性がある 固定費を把握し、数か月分の運転資金を確保する。単発案件だけでなく継続案件を増やす
働き方やスケジュールを決めやすい 営業・事務・経理も自分で対応する必要がある 会計ソフトや業務管理ツールを活用し、必要に応じて税理士や外部サービスも検討する
法人化や従業員雇用など事業拡大につなげられる 施工ミスや事故、損失などの責任を負う 損害賠償保険への加入、安全管理の徹底、施工記録や確認体制を整備する

電気工事士として独立するべき人・まだ独立しないほうがよい人

電気工事士として独立するタイミングは、資格を取得した年数だけで判断するものではありません。

必要な資格や実務経験を満たしていることに加えて、施工力、営業力、資金、経営管理まで準備できているかを確認する必要があります。

「独立できる状態」と「独立して安定経営できる状態」は異なるため、以下の表を参考に自分の状況を冷静に判断してみてください。

確認項目 独立を検討しやすい人 まだ独立しないほうがよい人 準備すべきスキル・資格
資格・実務経験 必要な資格を取得し、主任電気工事士の要件などを確認できている 第二種電気工事士を取得したばかりで実務経験が不足している 第一種・第二種電気工事士、認定電気工事従事者など仕事内容に応じた資格
施工能力 現地調査から施工方法の判断、トラブル対応まで一人で対応できる 先輩や会社の判断がないと施工を進められない 配線・設備工事・改修工事など幅広い現場経験
見積り能力 材料費・人工・経費・利益を考慮して見積りできる 工事金額の決め方や原価計算が分からない 積算、原価管理、見積書作成スキル
案件獲得 複数の取引先や紹介ルートを確保している 独立後の仕事が決まっていない、元請1社だけに依存している 営業力、顧客対応、取引先開拓
資金管理 開業費と数か月分の運転資金を準備している 工具や車両を購入すると生活費が不足する 資金計画、キャッシュフロー管理
工具・設備 受注する工事に必要な工具・車両・測定器を準備できている 必要な設備が不足していて案件を限定される 工具選定、設備投資判断
営業・集客 紹介、協力会社、Web集客など複数の集客経路がある 技術があれば自然に仕事が来ると考えている 営業活動、ホームページ運用、顧客管理
経理・事務 請求・入金管理・経費管理を自分で行える 売上と利益の違いを把握できていない 会計ソフト、確定申告、帳簿管理
リスク管理 賠償保険や労災特別加入などを確認している 事故や施工ミス時の対応方法を考えていない 損害賠償保険、安全管理、労災制度
事業計画 住宅・店舗・法人案件など狙う市場が決まっている 「独立すれば稼げる」と考えている 受注戦略、利益計算、事業計画作成

電気工事士の独立に関するよくある質問

ここでは、電気工事士の独立に関するよくある質問についてまとめています。

第二種電気工事士を取って何年で独立できますか?

第二種電気工事士を取得したからといって、3年後に必ず独立できるわけではありません。

第二種電気工事士が自ら主任電気工事士となり、一般用電気工事を行う場合は、第二種電気工事士免状の交付後に3年以上の電気工事に関する実務経験を有していることなどが要件になります。

ただし、この「3年」は単なる勤続年数ではなく、主任電気工事士の要件として認められる実務経験であるかを確認する必要があります。

独立を考える場合は、免状の取得時期だけでなく、これまで担当した工事内容、実務経験の証明方法、独立後に受注したい工事の種類まで整理しておきましょう。

電気工事士は一人でも独立できますか?

電気工事士は、一人親方として独立して事業を始めることが可能です。

ただし、電気工事士の資格を持っているだけでは不十分で、受注する工事に必要な資格、主任電気工事士の要件、電気工事業法に基づく登録・通知などを確認する必要があります。

また、独立後は施工だけでなく、営業、現地調査、見積り、材料発注、請求、入金管理、経理なども自分で行わなければなりません。

そのため、一人で施工できる技術だけでなく、案件を獲得して利益を残すための経営スキルも必要になります。

電気工事士として独立すると年収1,000万円を目指せますか?

電気工事士として独立し、年収1,000万円を目指すことは可能ですが、必ず達成できるわけではありません。

特に注意したいのが、「売上1,000万円」と「所得1,000万円」は異なるという点です。

独立後の収入は、売上から材料費、外注費、車両費、工具費、保険料、通信費などの経費を差し引いた金額で決まります。

例えば、元請として高単価の案件を受注できる場合でも、材料費や外注費が大きければ利益は少なくなる可能性があります。

独立後の所得は、以下の要素によって変わります。

影響する要素 内容
受注形態 元請・下請・応援などで利益率が変わる
工事単価 価格設定や交渉力によって変動する
稼働日数 施工できる時間には限界がある
材料費・外注費 原価管理によって利益が変わる
固定費 車両費・保険・通信費などが影響する

「独立すれば高収入になる」と考えるのではなく、売上をどのように作り、どれだけ利益を残せるかまで計画することが重要です。

電気工事士の独立に第一種は必須ですか?

すべての電気工事士の独立で、第一種電気工事士が必須というわけではありません。

住宅や小規模店舗など、一般用電気工作物等を中心に受注する場合は、第二種電気工事士でも対応できる工事があります。

一方で、工場やビルなど一定範囲の自家用電気工作物に関する工事を扱う場合は、第一種電気工事士が必要になるケースがあります。

そのため、第一種を取得するかどうかは「独立するか」ではなく、「独立後にどの工事を受注したいか」で判断するようにしましょう。

独立後の方向性 確認する資格
住宅・小規模店舗中心 第二種電気工事士でも対応可能な範囲がある
店舗・法人案件を広げたい 第一種電気工事士を検討する
工場・ビル関連を扱いたい 必要資格や施工範囲を確認する

電気工事士の独立に建設業許可は必要ですか?

すべての電気工事で建設業許可が必要になるわけではありません。

建築一式工事以外の建設工事では、原則として1件の請負代金が500万円未満(税込)の軽微な建設工事のみを請け負う場合、建設業許可は必須ではありません。

一方で、500万円以上の電気工事を請け負う場合は、建設業許可が必要になる可能性があるため、工事規模に応じて確認する必要があります。

また、建設業許可を取得した場合でも、電気工事業法上の登録や届出が不要になるわけではありません。

確認項目 内容
電気工事業登録 電気工事業を営むために必要な手続き
建設業許可 一定規模以上の工事を請け負う場合に必要
判断基準 工事内容・請負金額・事業形態で確認

電気工事士として独立するなら何歳がベストですか?

電気工事士が独立するタイミングは、年齢だけで判断するものではありません。

30代が適している、40代では遅いといった一律の基準はなく、重要なのは資格、実務経験、施工能力、顧客、資金、生活環境が整っているかです。

確認項目 判断ポイント
資格 独立後の工事に必要な資格があるか
経験 一人で施工判断できるか
顧客 継続的な案件獲得先があるか
資金 開業費・運転資金を確保できるか
生活 収入変動に対応できるか

年齢よりも、「独立後に事業を継続できる準備ができているか」で判断することが大切です。

電気工事士は独立して仕事がなくなることがありますか?

電気工事は一定の需要がある仕事ですが、独立したからといって自動的に仕事が入るわけではありません。

特に、元請1社からの紹介だけに頼ると、その会社の発注量や経営状況によって売上が大きく変動するリスクがあります。

安定して仕事を確保するためには、以下のような複数の受注ルートを作ることが大切です。

受注先 特徴
電気工事会社 協力会社として継続案件を狙える
工務店・リフォーム会社 住宅関連工事につながりやすい
管理会社 修繕・設備交換案件を獲得しやすい
一般顧客 直接受注で利益を確保しやすい

独立前から取引先候補を作り、複数の案件獲得ルートを確保しておくことが、仕事不足を防ぐポイントです。

まとめ|電気工事士の独立は資格より先に「仕事と利益」まで設計しよう

電気工事士は独立できる仕事ですが、資格を取得しただけで安定した事業が始められるわけではありません。

独立を成功させるには、施工に必要な資格だけでなく、電気工事業法上の登録・通知、必要に応じた建設業許可、案件獲得、資金管理まで準備する必要があります。

特に第二種電気工事士の場合は、主任電気工事士になるための実務経験要件を確認し、独立後にどの工事を受注するのかを明確にしておくことが重要です。

また、独立後の収入を考える際は、売上だけを見るのではなく、材料費や外注費、車両費などを差し引いた利益で判断しましょう。

独立前には、以下の順番で準備を進めると失敗リスクを抑えられます。

電気工事士の独立前のチェックポイント

ただし、このチェック項目を満たした数だけで「独立可能」と判断することはできません。

まずは、電気工事業を営むための資格・登録など法的条件を満たしているいるか、仕事・資金・経営管理の準備が整っているかを確認しましょう。

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