子どもが好きだから、人と接するのが好きだから、そんな思いから保育士を志して夢を叶えた人も多いでしょう。
しかしいざ現場へ出てみると思っていたよりもずっと辛いと感じてしまう瞬間はありませんか?
「もしかしてこんな思いをしているのって私だけ?」なんて一人で思い詰めてしまう事はありません。
実は、保育士は需要が多い割に待遇が中々改善されない職業の一つなのです。
今回は保育士が抱えてしまいがちな不満やその対処法をご紹介します。
保育士は不満が多い職業
保育士の仕事内容は?と聞かれた時、多くの人は「子どものお世話をする事」と応えるのではないでしょうか。
確かに子どもの面倒を見て健全な成長を助ける事は保育士としての大切な使命です。
しかし実際には書類や資料の作成管理、行事の準備などの力仕事など様々な能力が要求されるお仕事であると言えます。
加えて子どもから保護者、上司など幅広い世代の人間とのコミュニケーションが必要です。
多様な仕事や人間関係に囲まれた環境に置かれる保育士という仕事は、方々からのストレスで不満を抱えてしまう事が宿命とも言えるでしょう。
ほぼ100%の保育士が不満をかかえている
保育士や幼稚園教諭の求人情報を取り扱うサイト「FINE!保育士」を運営している株式会社ネオキャリアでは2017年に「国や自治体の保育士不足に対する政策についてのアンケート」という調査が行われました。
その結果、「行政の保育士政策には効果が無いと思いますか?」という問いかけに対して「とてもそう思う」という回答が実に62.2%、「まぁまぁそう思う」が30.8%におよびました。
この調査は10代~60代の男女保育士や保育経験者を対象としたもので、世代や性別を問わず殆どの保育士が現状に不満を抱いている結果が浮き彫りとなりました。
保育士の仕事の悩みTOP5
複雑な職場環境や求められるスキルの多様さ、さらには効果の実感出来ない行政の対応など、多くの働き手が不満を抱えている保育士業界はその不満内容の内訳も様々です。
一つの不満から連鎖的に派生して、色々な事が気になってしまうというケースも考えられます。
転職サイトや厚生労働省の調査結果から代表的な不満の上位5つをご紹介してみますので、ご自身の持つ不満と照らし合わせてみるのも良いでしょう。
1位人間関係の不満
最も多く見られたのは「上司や同僚との人間関係が上手くいかない」という回答でした。
不満の多い職場環境では自分の他の職員もストレスを溜め込みやすく、結果的に些細な食い違いや思い込みから人間関係のトラブルへ発展してしまう事が多い様です。
同僚からは陰口などでストレスの捌け口にされたり、上司には仕事や責任の押し付けと言ったパワハラめいた被害に会ったという回答も見られました。
職場毎に働く人間が違うにも関わらず多くの保育士が人間関係に悩みや不満を抱いてしまうという事は、やはり職業柄こうした傾向が強いといえるのではないでしょうか。
2位仕事の多さ
毎日の子どものお世話や行事の準備・実行に加えて保護者への連絡帳や業務日誌といった書類作成、活動計画の立案など保育士の事務作業量の多さには実際職に就いて驚いた人も多いでしょう。
中には残業が習慣化してしまい時間外手当も付かないと言った職場も少なくありません。
保育園は自治体からの補助金で運営費を賄っている所も多く、こうした公的な書類は簡素化が難しい事からも中々改善が捗らない事も保育士の不満としてよく挙げられています。
3位給料への不満
どんなに保育への情熱があっても生活にお金は必要不可欠、自身の暮らしが充実しない事には仕事にも中々身が入らない事でしょう。
しかし、残念な事に保育士の年収は他業種のそれを大幅に下回っているのが現状です。
厚生労働省の調査によると職業全体の平均年収425万円に対して保育士の平均年収は317万円と100万円以上の開きがある事が報告されています。
平均年収には園長クラスや幹部職員の年収も計算されている事を考えれば、一般的な保育士やパートタイマーの給与事情がどれだけ逼迫しているかは想像に難くないでしょう。
4位人手が足りないことへの不満
待機児童解消に向けて保育士のニーズは右肩上がりの昨今ですが、一般的にも現状の労働環境が認知され始めたせいもあってか、あまり人気の高い職業とは言えず慢性的な人手不足に陥っている保育園も少なくありません。
厚待遇の求人に応募が集中して保育士の取り合いになっている事も人手不足に拍車をかけているようです。
人手が足りなければ当然一人頭の仕事量が増えてしまいますが、現実問題としてしっかりとした手当てや加給が付く保育園はそう多くありません。
行事や残業の少ない企業内保育や小規模保育が保育士の人気を集めているのはこの為と言えるでしょう。
5位プライベートと両立できない不満
人手不足にも関連する事ですが、開園時間の長い保育園や休日保育を行っている場合は勤務シフトが複雑化する傾向にあります。
パートタイマーへの依存度が高い職場に於いて法律で定められた休日数や勤務時間を加味してシフトを作成すると、この傾向が顕著に出やすいです。
勤務時間帯は私生活のバイオリズムにも影響する事ですから、こうしたシフトの複雑化は体調管理やプライベートの充実を妨げる要因となってしまいます。
不満を持っている保育士はどうしているのか?
厳しい労働環境や現実に置かれている保育士というお仕事、そんな中で不満を抱いている保育士はどのようなアクションでその不満に立ち向かっていると思いますか?
多くの悩める保育士達の力になってくれている保育系転職サイトの統計では「我慢して働き続ける」「保育職を離れる」「転職」の3つが主な選択肢とされています。
3割の人が「我慢して続けている」
不満を持つ保育士の3割が、その現状に我慢しながらも働き続けています。
「仕事に対して不満の一つや二つ持つ事もあるだろう」と割り切って、仕事のストレスを上手くプライベートで発散させている人が多い様です。
自分が辞めた後の職場の負担や失業中の生活、次の仕事の事を考えると中々アクションに踏み出せないというケースもあるようです。
2割の人が保育士を辞めている
実際に「保育士を辞める」というアクションをとる人も少なくないと言います。
失業中の生活にもゆとりがあり、周囲の理解も得られる場合には疲れきってしまった心身を一度リセットして、また新たな求職活動に踏み出すのに良い選択肢といえるのではないでしょうか。
離職後にまた保育への情熱が再燃し、保育士へカムバックするという人も居る様です。
2割の人は「転職」
保育士として仕事を続けていく自身が無いけれど、キャリアを無駄にしたくないと人は転職という選択肢を採っています。
資格の有無にもよりますが、キャリアを活かした保育士からの転職先としては託児所や病院内保育施設、児童館職員や介護職といったものが人気です。
2010年に法律で認められた保育ママという業態で生計を立てる人も多いようで、自治体ではこうした事業の援助にも注力している所も多くなってきています。
不満が解消しないなら他保育園へ転職がおすすめ
今の保育士の仕事に対して不満はあるけど生活の事もあるし、いきなり転職活動は不安だ、と中々踏み出せずに居る時には他の保育園への転職を考えてみましょう。
給与や人員配置、特に職場の人間関係は職場毎に異なるので保育士としてのキャリアを絶やさずどうにか現状の不満を解消・軽減したいという人には効果的な手段です。
その際には保育系転職サイトの求人を見比べたり転職エージェントに相談してみる事をオススメします。
業界の待遇事情や転職活動に精通したプロの意見を聞くことで自分では気付かなかったポイントに気付く事が出来るかもしれませんよ。
まとめ
保育士という仕事は様々な要因から不満を抱きやすく、溜め込んでしまうと身も心も壊してしまいかねません。
「もう限界だ」と感じる前に一人で抱え込まず、信頼出来る上司や同僚などに早めに一度相談してみましょう。
それでも不満が解消する身込みがなさそうなら、転職や離職など外に目を向けて自分から道を切り開いて行く事も必要になるでしょう。
転職を考える際にも一度心を落ち着かせて、プロの言葉に耳を傾ける事が失敗しない為のコツです。
どのような行動を採るにせよ、一人で悩んで不満に押しつぶされてしまう事だけは避けてくださいね。