省令3号のイ(例外事由3号のイ)とは、求人において年齢制限を設ける際に認められる、特別な条件の一つです。
厚生労働省の「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?― 年齢にかかわりなく、均等な機会を 例外事由3号のイ (p.8)―」では、「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」に適用できるとされています。
今回は、省令3号のイとは何か、わかりやすく徹底解説します。
「省令3号のイで年齢制限を設けられるのは何歳まで?」「省令3号のイに基づいて求人を出すときのルールは?」といった疑問に対する回答を掲載しました。
- 「省令3号のイ」とは、企業内での人材育成を目的に、長期的な雇用をする場合、年齢制限を設けられるというもの。
- 新卒者あるいはおおむね45歳未満の若年者が対象。
省令3号のイとは
「省令3号のイ(例外事由3号のイ)」とは、「長期的なキャリア形成を目的として企業が若者を採用したい場合、例外として、求人に年齢制限を設定してよい」という国のルールです。
通常、求人において年齢制限を設けることは、法律で禁止されています。
しかし例外的に、「省令3号のイ」に基づいて、求人に年齢制限を設けることは可能です。
ただし「省令3号のイ」に基づいて、求人に年齢制限を設ける場合、期間を定めずに雇用しなければなりません。
あくまで、長期的なキャリア形成を目的としていることが前提だからです。
厚生労働省の「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?― 年齢にかかわりなく、均等な機会を 例外事由3号のイ (p.8)―」では、「省令3号のイ(例外事由3号のイ)」を適用できるケースが、次の通り説明されています。
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等(注)を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
企業は適正な人材育成のために、必要な年齢制限を設けることができます。
原則として求人に年齢制限を設けてはならない理由
2007年に改正された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第九条」によると、求人に年齢制限を設けることは、法律で禁止されています。
年齢制限付きの求人が禁止されているのは、年齢差別を防止し、全ての年齢層に平等な雇用機会を提供するためです。
特に少子高齢化社会において、全ての労働者が、能力や経験に応じて公平に活躍できる環境を整えることが求められています。
内閣府の「令和4年版高齢社会白書 図1-1-2 高齢化の推移と将来設計(p.4)」では、2021年時点と比較して、2050年には就業人口が約29.2%減少すると推測されています。
また、年齢に基づく不当な差別をなくすことで、労働市場の健全な発展を促進する狙いがあります。
「省令3号のイ」が設けられている理由
「省令3号のイ」に関しては、日本の雇用慣行、特に新卒一括採用と長期間の雇用継続を考慮して設けられました。
また、特に就職の厳しい時期に正社員になれなかった年長フリーターやニートの増加に配慮し、若者の雇用機会を確保するために設けられています。
「例外事由3号のイ」の詳細
ここでは、「省令3号のイ(例外事由3号のイ)」の具体的なルールを解説します。
年齢は何歳までか
先ほども引用した厚生労働省の「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?― 年齢にかかわりなく、均等な機会を 例外事由3号のイ (p.8)―」では、「省令3号のイ(例外事由3号のイ)」を適用できる年齢が、次の通り説明されています。
- 基本的には35歳未満の若年者が対象です。ただし、必ずしも35歳未満に限りません。
- 定年が設定されている場合、極端に短い勤続期間になるような上限年齢を設定してはいけません。「例外事由3号のイ」に基づいて設定できる年齢制限は、おおむね45歳未満までです。
指定する年齢は何歳まで、という厳密なルールはありません。
採用基準
「省令3号のイ」に基づいて年齢制限つきの求人を出す場合、職業経験や処遇にもルールが設けられています。
- 職業経験は不問。
- 新卒者以外の若年者も、新卒者と同等の処遇で採用すること(賃金が完全に一致する必要はないが、同様の訓練・育成体制を提供する)。
ただし資格や免許、学歴の指定は可能です。
雇用形態・書き方
「省令3号のイ」に基づいて年齢制限つきの求人を出す場合、次の点も押さえておく必要があります。
- 無期労働契約であること。
- 求人に「35歳未満(長期勤務によるキャリア形成をはかるため、例外事由3号のイ)」というように記載する。
「省令3号のイ」に基づく年齢制限が認められる事例
「省令3号のイ」に基づく年齢制限が認められる具体的な事例は、次の通りです。
- 35歳未満の人を募集(高卒以上・職務経験不問)
- 45歳未満の人を募集(要普通自動車免許)※必要な免許や資格を定めることも可能。
- 特定の卒業年度の新卒者を募集
「省令3号のイ」以外の例外として年齢制限が認められるパターン
求人において、例外として年齢制限が認められるパターンは、「省令3号のイ」だけではありません。
全部で6つあります。
つまり年齢制限がある求人だからといって、必ず「省令3号のイ」に当てはまるわけではありません。
例外として年齢制限が認められるパターン
- 定年の年齢を上限として、募集する場合(例外事由1号)
- 労働基準法等の法律で、年齢制限が設けられている場合(例外事由2号)
- 長期勤続によるキャリア形成を図るために、若年者を募集する場合(例外事由3号 イ)
- 技能・ノウハウ継承のために、特定の職種・年齢層を募集する場合(例外事由3号 ロ)
- 芸術・芸能の分野で、特定の年齢の人材を募集する場合(例外事由3号 ハ)
- 60歳以上の高齢者や、その他特定の年齢層の人材を募集する場合(例外事由3号 ニ)
柔軟に対応するために年齢制限の例外が設けられている
例えば、省令3号のイに基づく場合、若年者を対象とした長期的なキャリア形成を目的とした雇用が該当します。
他にも、技能の継承が必要な特定の職種や、高齢者を積極的に採用するための理由がある場合なども、例外として年齢制限が認められます。
これらの例外は、特定の雇用目的や政策的な必要性に応じて、柔軟に対応するために設けられています。
「省令3号のイ」に関するよくある質問
「省令3号のイ」に関するよくある質問に回答します。
POINT
- 「省令3号のイ」に基づいて求人に年齢制限を設けるときの書き方は?
- 「省令3号のイ」では経験者採用ができない?
「省令3号のイ」に基づいて求人に年齢制限を設けるときの書き方は?
「省令3号のイ」に基づいて求人に年齢制限を設ける場合、以下のように明記することが必要です。
「省令3号のイ」では経験者採用ができない?
「省令3号のイ」では、職業経験を問わない若年者の募集が求められています。
そのため、経験者採用は原則としてできません。
重要なのは、募集要項に経験を求める文言を記載しないことです。
省令3号のイは若者を長期的に育成したい場合に適用できる
以上の内容をまとめると、省令3号のイとは、若年者を長期的に育成したいときに適用できる例外規定です。
具体的には、企業が若年者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用し、その後長期にわたってキャリア形成を図る場合に適用されます。
省令3号のイの適用により、企業は一定の上限年齢を設定して、若年者を募集・採用することができます。
なお求人に年齢制限を設定できる例外事由は、「省令3号のイ」だけではありません。
採用ニーズにあわせて活用することが大切です。