子供たちにとって無くてはならない存在である「保育士」。
安全を確保しながら子供たちに充実した保育を届けてくれる保育士は、社会にとってもとても重要なお仕事といえます。
子供たちの安全を守らなければならないお仕事なことから、一般的には大変なお仕事と認知される事が多い保育士ですが、実際の年収はどれくらいなのでしょうか。
この記事では、保育士の平均年収や今後の動向などを解説していきます。
ぜひ参考にしてくださいね!
年代別の保育士の平均年収
まずは保育士の平均年収を年代別に確認していきましょう。
厚生労働省が毎年実施している調査に、「賃金構造基本統計調査」というものがあります。
令和2年の調査では、20~24歳は約300万円、25~29歳は約350万円、30~34歳は約370万円と、年齢を重ねるごとに増加していきます。
営業職のように実力主義による昇給は基本的にありません。
表を見ると60代の年収が大きく低下していますが、これは定年を迎えた人が退職した分、全体の平均がさがっているからです。
年齢 | 平均年収 |
20~24歳 | 約300万円 |
25~29歳 | 約350万9,000円 |
30~34歳 | 約367万8,000円 |
35~39歳 | 約381万2,000円 |
40~44歳 | 約389万1,000円 |
45~49歳 | 約392万円 |
50~54歳 | 約431万6,000円 |
55~59歳 | 約430万3,400円 |
60~64歳 | 約394万7,000円 |
65~69歳 | 約359万3,000円 |
経験年数別の保育士の年収
つづいて、経験年数別の保育士の年収を確認しましょう。
先ほど開設した年齢と同じく、基本的には経験年数が多くなるほど年収もアップしていきます。
政府が令和3年に発表した調査では、以下のようになっています。
経験年数 | 平均年収 |
1年未満 | 約256万8,000円 |
1年から4年 | 約330万2,000円 |
5年から9年 | 約361万円 |
10年から14年 | 約381万9,000円 |
15年以上 | 約440万6,000円 |
多くの保育園では年功序列が導入されていることがほとんどなので、例えば一般的な営業職のように「営業成績が突出した若手社員が先輩社員より多く稼ぐ」というケースはまずありません。
そもそも商売ではないため、業績や利益といった概念も基本的には存在しません。
「公立」と「私立」による違い
保育所には公立と私立に分かれています。
保育士の年収を考える上では、これらの要素も抑える必要があるでしょう。
公立と私立の間には、保育の内容自体には大きな差はありませんが、保育士の収入面ではどうでしょうか。
政府がまとめた調査によると、保育士の給料は公立・私立ともに平均で約30万円となっており。二つの間に大きな差はありません。
しかし、主任保育士や施設長などの役職がついている場合には、公立の方がより高給である傾向があります。
職種 | 公立保育所 | 私立保育所 |
施設長 | 約63万3,000円 | 約56万6,000円 |
主任保育士 | 約56万2,000円 | 約47万3,000円 |
保育士 | 約30万3,000円 | 約30万2,000円 |
出典:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査結果<速報値>
保育士の年収が低いと思われがちな理由3選
保育士と聞くと、年収が少ないことをイメージする人もめずらしくありません。
先ほど解説したように、行委界全体の中で突出して年収が低いお仕事でないにもかかわらず、なぜこのように思われるのでしょうか?
ここでは保育士の年収が安いと思われがちな主な理由を、3つに絞って解説します。
- 仕事の量に見合っていない
- 責任の重さに見合っていない
- 公定価格のため収入が大きく増えない
一つ一つ確認していきましょう。
①仕事の量に見合っていない
保育士のお仕事は、子供たちと接するだけではありません。
年間行事計画の作成や、翌日のための準備、、連絡帳の記入などさまざまな業務をこなす必要があります。
子供たちが帰った後にも、園内の清掃や保護者向けの書類の作成など、片づけなければならないことは山積みです。
さらに、近年の新型コロナウイルスの蔓延により、日々の業務に加えて備品や遊具の徹底的な消毒も行わなければならなくなりました。
このように、保育士がこなす業務は非常に多いですが、成果報酬などが支給されることがほとんどありません。
そのため、激務でありながら給料が安いと感じることが多いようです。
②責任の重さに見合っていない
子供たちを預かる以上、ケガや事故などが発生しては大変です。
そのため、保育士は常に子供たちに気を配らなければなりません。
目を離したすきに子供たちが大けがをしてしまっては、大問題です。
このように保育士は、常に緊張感を保ちながら仕事を必要がありますが、実際に行うのはかなり大変です。
そのうえ、近年ではモンスターペアレントが大きな問題になっていて、保護者から理不尽な内容でクレームをつけられることもあります。
加えて、万が一災害が発生した場合の対処、不審者や変質者に対する警戒など、考えなければならないことは山のようにあります。
こうした責任の重さに対して給料が安いと考える保育士は少なくなく、実際に保育士が転職を考える際の理由として、非常に多いです。
③法的な問題の影響
公立の保育園の場合、保育士の給料は基本的に各自治体で決められています。
こうした場合には、安定した収入を得ることができるというメリットがありますが、私立の保育園の場合、保育園の運営にかかわる財源の確保が非常に難しい事もあるのです。
認定保育園の例をあげると、国や県、各地方自治体から支払われる補助金と、園を利用している保護者からの利用料が主な財源となります。
国や自治体からの補助金には税金が使われていたり、保育料には「公的価格」といわれるある程度の基準が設けられていたりするので、一般的な企業や会社のように、売り上げによって園の財源を増やすという事が基本的にはできないのです。
さらに、定められた一定人数の保育士を常に配置しておかなければならないため、人員削減によるコストダウンが難しいことも影響しています。
このように、保育園の運営にはさまざまな法的要素が関係してくるため、給料をアップさせづらいという現状があるのです。
保育士が年収を上げる方法3選
では、保育士が年収を挙げたい場合には、どのような方法があるのでしょうか?
おススメの方法を3つ解説します。
- 資格を取得する
- 転職する
- 「処遇改善加算」を利用する
それぞれ目を通していきましょう!
①資格を取得する
一番取り掛かりやすい方法が、「資格を取得する」というものです。
多くの保育園では、資格手当を支給しています。
関連資格を取得することで毎月の給料が加算されれば、大きな年収アップがみこめるでしょう。
加えて、資格取得を目指すことで、知識やスキルをより高めることも可能です。
②転職する
先ほど開設した通り、保育園の運営にはさまざまな法的要素がからんでいるため、簡単に待遇改善ができない問題があります。
長く働いている保育園で一向に年収が上がらない場合には、思い切って他の保育園に転職することも一つの手です。
ただし、現在公立の保育園で働いている保育士が、同じく公立の保育園へ転職することはお勧めできません。
上でもふれたとおり、公立の保育園の給料は自治体によってある程度決められているため、たとえ転職に成功しても大幅な年収アップや待遇改善を実現しづらいのです。
そこでおすすめなのが、私立保育園への転職です。
私立であれば、公立と比べると年収アップを狙いやすいでしょう。
ただし、公立の保育園にメリットがないわけでは決してありません。
公立保育園は住宅手当や通勤手当など、福利厚生が充実していることが多いです。
年収アップを狙う場合には、こうした福利厚生にも目を向けてみてください。
③「処遇改善加算」を利用する
保育士の人材不足の解消や、増加する待機児童への対処などを狙って実施されている「処遇改善加算」というものがあります。
保育士の待遇改善に向けて大きな期待が寄せられている制度の1つです。
キャリアアップを狙う上でもぜひ利用したい制度なので、しっかりと押さえておきましょう。
次で詳しく解説します。
「処遇改善加算」とは??
処遇改善加算とは、保育士の待遇を改善することで、保育士の離職率の低下や人材の確保、復職率の向上などを目指し、政府が2015年にスタートさせた政策です。
保育士が転職を決意する背景には、年収の低さが大きく影響しているため、こうした面が改善されれば保育の現場に良い流れが生まれるでしょう。
そんな処遇改善加算ですが、「I」と「II」の二つの種類があり、それぞれ仕組みや給料加算の内容が異なります。
それぞれの違いをよく理解しましょう。
処遇改善加算I
まずは「処遇改善加算I」についてです。
この制度は、主に不足している保育士の人材確保やさらなる保育の充実などを図り、2015にスタートした制度です。
注目すべき点は、正規の職員だけではなく、1日6時間以上・月20日以上働くパート保育士やアルバイト保育士も対象である点です。
加算は働いている職員の平均経験年数によって行われ、「基礎分」と「賃金改善要件分」という要素から加算される金額が算出されます
それぞれの要素をみてみましょう。
基礎分
まずは基礎分についてです。
職員一人あたりの平均経験年数から、人件費に加算される割合がきまります。
平均勤続年数は、「対象の全職員の合計勤続年数÷対象の職員数」の計算式で割り出されます。
具体的には、以下の通りです。
平均経験年数1年・・・3%
平均経験年数2年・・・4%
平均勤続年数3年・・・5%
このように、平均勤続年数が1年増えるごとに1%ずつ増えていきます。
ただし、平均勤続年数が10年を超えると、それ以上は一律12%です。
賃金改善要件分
対して「賃金改善要件分」とは、施設が行う保育士に対する賃金の改善、見直しなどの取り組みに対して実施される処遇改善です。
こちらも基礎分と同じく、職員の平均勤続年数から加算分が決定します。
平均勤続年数が11年未満の場合は一律6%、11年以上の場合は一律7%が加算される仕組みです。
キャリアパス要件分
上で開設した「賃金改善要件分」に含まれる要素に、「キャリアパス要件分」というものがあります。
携わる業務内容や、園長、主任保育士などの役職に応じた労働条件の制定、キャリアアップのための研修や、制度を職員に周知させることなどを加算の要件として設けられているものです。
これらの要素を満たしていない場合には、先ほどの賃金改善要件分から2%を引かれる点に注意が必要です。
処遇改善加算II
続いて「処遇改善加算II」についてみてみましょう。
保育の現場では、一般的な企業と比較した場合、設置されている役職が非常に少ないです。
そのため、何年勤続しても昇進や昇級ができずに、年収が増えないという事態が常態化していました。
処遇改善加算IIでは、これまでの保育園の役職に「副主任保育士」、「専門リーダー」などの中堅役職を新たに設置し、それぞれの役職に応じた額の給料アップを行うことで、今まで充実しているとは言い難かった保育園内でのキャリアアップを充実させることを目指しています。
役職によっては最大で40,000もの給料アップがねらえると同時に、新たな役職へのキャリアップも目指せるため、今後の保育現場が大きく変わることが期待されています。
保育士の今後の動向
政府による新しい制度の導入や、待遇改善を求める現場の声、少子高齢化の進行など、保育士を取り巻く環境は激しく動いています。
そんな保育士ですが、今後年収や働き方はどのように変化していくのでしょうか?
保育士の年収について考える場合、こうした今後の動向にも目を向けることで、より多角的な考察ができます。
以下に、保育士を取り巻く主な要素について詳しく解説していきます。
それぞれしっかり確認してくださいね!
幼児教育無料化の影響は?
政府は2019年10月から「幼児教育と保育の無償化」をスタートさせました。
この制度は認可保育園や幼稚園に通う3歳から5歳の子供たちの保育料を無償化するもので、加速している少子高齢化の対策の一環として導入されたものです。
保育料が無償化されることで、保育士の待遇がさらに悪くなるのではと心配する声もあがりましたが、実際には必要以上に心配する必要はありません。
というのも、無償化された分の補填として、2019年から導入された消費税率10%の税収分が、新たなに充てられるからです。
同時に、2019年4月から保育士の給料も月1%引き上げられており、今後も保育士の待遇改善に向けた取り組みが継続されることが予想されています。
以上のことから、幼児教育・保育料無償化が保育士に与える影響は少ないと考えられるのです。
需要は増加していく
少子高齢化に伴い、一部では保育士の需要の低下を懸念する声が上がっています。
しかし、この点についても心配は少ないです。
共働きの家庭やひとり親の家庭が増加している昨今、保育園を利用したい保護者は年々増加傾向にあります。
特に共働きの家庭は、現在では珍しいケースではなくなり、今後も増えていくとみられているのです。
加えて、保護者の意識も変わりつつあります。
「出産後、なるべく早いうちから復職したい」、「小さなうちから集団の中で行動させて、協調性や社会性を身につけさせたい」と願う保護者が増えるにつれ、保育士の需要も非常に高まっているのです。
特に都市部では待機児童が大きな社会問題の1つとなっており、保育士の重要性は益々あがってきています。
問題解消のために、各自治体は保育所の新設や受け入れ人数の増加に力をいれていますが、保育士の数がなかなか追いついていません。
こうしたことから、今後も保育士の需要はさらに加速することが予想されているのです。
待遇の改善が進む
そんな保育士ですが、政府は待遇の改善にも力を入れています。
先ほど紹介した「処遇改善加算」もその一つで、キャリアアップが難しかった保育士の現場に新たな流れが生み出されると期待されています。
2022年2月から9月までの間、政府は保育士の月の賃金をさらに3%引き上げる政策を導入するなど、保育士の待遇改善に力を入れています。
ただし、この金額は国が定めた保育士の配置人員数を基準として算定されたもので、実際の支給は施設の判断によって行われたものです。
そのため、全保育士の賃金が確実に3%引き上げられたわけではなく、実際に上乗せされた金額はもっと少ないものであったことも報告されています。
今後のより充実した待遇改善に期待したいところです。
保育士におススメの転職サービス4選
年収アップのために転職を決意しても、何から手を付ければいいのかわからないという保育士も少なくありません。
保育士が年収アップを狙って転職する上では、数ある転職エージェントの中から最適なものを選ぶことが大切です。
ここではおすすめの転職エージェントを4つ紹介します。
ぜひ参考にしてくださいね!
保育士バンク
保育士バンク!の特徴
- 厚生労働省認可の保育士・幼稚園教諭専門の転職サイト
- 日本最大級の求人数
- 非公開求人も多く取り扱っている
保育士!バンクは、厚生労働省が認可した保育士や幼稚園教諭専門の転職サイトです。
最大級の求人数をほこり、全国の求人に対応しています。
さらに全国主要都市の求人を効率よく探せたり、園名や法人名での検索も可能だったりと、ストレスのない求人検索が可能です!
ほいく畑
ほいく畑の特徴
- 最新の保育士の転職動向も把握している
- 掲載されている求人の就業形態が豊富
- 土日、夜間の面談も可能
- 週払い制度がある
つづいてオススメする転職サービスが、こちらの「ほいく畑」です。
保育の現場に精通したアドバイザーが、希望の条件について丁寧にヒアリングを行ってくれますよ。
うれしいことに、土日や夜間でも対応してくれるので、平日や日中に時間がとりづらい保育士にはピッタリといえます。
また、正規職員以外のお仕事も豊富に取り扱っているので、自分のライフスタイルに合わせたお仕事を見つけることができるでしょう。
マイナビ保育士
マイナビ保育士の特徴
- 最新の保育士の転職動向も把握している
- 求人数が多い
- 関西地方の求人も豊富
- コンサルタントによる手厚いサポート
続いて紹介するのは、こちらの「マイナビ保育士」です。
転職サービス最大手の1つとして有名な「マイナビ」が運営する保育士専門の転職エージェントです。
大手のマイナビが運営しているだけあり、手厚いサポートを受けることができます。
それだけでなく、面接のスケジュール調整や、応募先の園との年収交渉など、転職活動で時間や手間のかかる作業も代行してくれるので、忙しい保育士はぜひ活用してください!
ヒトシア保育(旧:保育ひろば)
ヒトシア保育の特徴
- 転職活動そのものに関する相談ができる
- 求人数が多い
- 内定までのスピードが早い
- 面接・職場見学にコンサルタントが同行してくれる
1つめにオススメするのが、こちらの「ヒトシア保育」です。
保育士特化型の転職エージェントで、扱う求人は他のサービスと比較しても充実しています!
さらに、応募する園の面接にもコンサルタントが同行してくれるので、面接に苦手意識のある人でも自信をもって臨むことができますよ!
まとめ~保育士の平均年収の解説~
この記事では、保育士の平均年収について、年代や施設形態などのパターンに分けてそれぞれ詳しく解説してきました。
保育士の待遇については、様々な方面から改善がもとめられており、それらを受けて政府も様々な政策を導入しています。
中でも注目したいのが「処遇改善加算」です。
今まで保育の現場ではキャリアアップが難しい問題がありましたが、この政策が導入されることで、保育の現場にも新たなポストが生まれます。
役職に就くことで、今まで難しかった年収アップや昇進が実現すれば、保育士の離職率低下につながることが期待できます。
保育士は今後も需要の増加が予想されているお仕事です。
さらなる待遇の改善に期待したいところです!