専門学校や大学を卒業した後、社会人経験がない既卒の存在が注目されています。

過去には新卒一括採用が主流だったため、一度卒業後に就職活動をしなかった者は既卒としての厳しい道を歩むことが多くみられました。

しかし、時代は変わり多くの企業が新卒や既卒の区別をなくし、能力主義の下での採用を進めています。

それでも、既卒者自体が持つネガティブなイメージや不安は根強いものがあります。

ここでは、多くの既卒者が感じる不安や疑問をキャリアアドバイザーの意見を交えて解消していきます。

既卒だからといって人生が終わるわけではない事実を伝えてきます。

既卒での就活には確かに困難もありますが、適切な対策とポジティブな姿勢で障壁を乗り越えることができます。

既卒者が持つ特性を理解し、特性を活かしら就職活動を進めるためのヒントやアドバイスを紹介します。

既卒とはそもそもどういう状態？

多くの人が学校を卒業し新卒として就職の道を選ぶ中、正社員としての経験がない状態で社会に出る既卒者は卒業から短期間だけでなく、長年に及ぶこともあります。

既卒とは何か、既卒以外のキーワード「第二新卒」や「フリーター」とどう違うのか、特徴と背景を詳しく解説します。

既卒とは

既卒とは学校を卒業してから正社員としての社会人経験がまだない人を指す言葉です。

高校・大学・短大などを卒業した後、アルバイトやフリーターとして過ごす間も含む、社会人として正式に雇用されていない状態を指します。

既卒の期間は学校を卒業してから約3年間とされており、3年を超えるとさらに就職活動が難しくなるとされています。

第二新卒との違い

第二新卒とは一度は正社員として就職を果たしたものの、短期間で退職し再度就職活動をする人たちを指します。

既卒との主な違いは少なからず正社員としての社会人経験があることです。

初めての勤務先でのビジネスマナーや実務経験を持つため、採用企業から見ると基礎的な部分は身に付いているとされます。

フリーターとの違い

フリーターは卒業後もアルバイトやパートとして生計を立て続ける人を指します。

既卒は正社員経験がないと定義されるのに対して、フリーターは正社員としての経験の有無に関係なくアルバイト生活を選択している点で異なります。

フリーターである理由は経済的事情やライフスタイルの選択など様々な背景が考えられます。

既卒の就活が厳しい理由

日本の就活文化では新卒一括採用が伝統的に主流となっていることが、既卒者の就活を難しくしています。

実際、文部科学省と厚生労働省の発表によれば2023年卒の大学生の就職率は97.3%と非常に高い数値を示しています。

既卒者が直面する就職活動のハードルとは一体何なのでしょうか。

新卒との違いを明確にし、既卒の就活が厳しい背景を詳しく探ってみましょう。

既卒の就活生の内定率は44.8％

日本の就活文化は新卒者を重視しており、影響を強く受けているのが既卒者たちです。

2022年度のマイナビ調査によれば既卒者の内定率は44.8％と50％を下回っています。

前年度よりは上昇しているものの、まだ4割に留まるこの数字からも既卒者の就活の難しさが窺えます。

特に「既卒向けの求人が少ない」という声が多く挙げられ、既卒の就職活動の厳しさの大きな要因となっています。

既卒採用をしている企業が少ない

既卒者を対象とした採用を実施している企業はあまり多くありません。

多くの企業は新卒を中心に採用活動を行っており、既卒者への枠が限られてしまうのが現状です。

業界や職種によっては「未経験OK」の求人もあるものの、範囲も限定的です。

しかし、IT・アパレル￥・介護などの業界では既卒者を受け入れる動きも見られるため、業界研究の重要性が高まっています。

日本の就活は新卒採用優先度が高い

日本の採用文化において新卒者への優遇は顕著です。

新卒者優遇は企業が新卒者に対して同時期に大勢を採用し、社風や業務を一から教えることが可能だと見ているためです。

新卒者は企業文化に馴染む可能性が高く、長期的な育成が期待できるという利点があります。

企業側の背景から新卒採用の枠は多く、既卒者にとっては厳しい状況となっています。

即戦力がなく中途採用枠では不利

既卒者が中途採用の枠で就活をする場面では、ライバルは実務経験豊富な転職者です。

企業が中途採用を行う場合、即戦力として働ける人材を求める傾向が強いため、社会人経験のない既卒者は不利となることが多いのです。

既卒者は自分の将来性やポテンシャルをしっかりアピールすることが求められます。

第二新卒や経験者との競争では差別化が重要となります。

既卒就活者につきまとうマイナスイメージ

既卒者が就職活動を進める際には多くの課題が待ち受けています。

特にマイナスイメージが既卒者を取り巻く環境の中で無言のプレッシャーとなっています。

新卒の多くが順調に就職を果たす中、既卒者がどのようなイメージの中で挑戦しているのか、実情に迫りたいと思います。

本人に何か問題があるのでは

多くの人は新卒採用が通常の進路であると考えます。

新卒採用ルートから外れた既卒者に対しては「何か問題があったのでは？」という疑念を企業側は抱きやすくなります。

学生時代の成績・人間関係・コミュニケーション能力等、具体的な問題点が推測され、既卒者はブランドが低下してしまう恐れがあります。

行動力や分析力に欠けるのでは

大学生活という短期間での成功体験としての新卒就職は、学生の行動力や分析力を証明するものとして位置付けられています。

既卒者が新卒採用で成功を収めることができなかった場合、能力や意欲に疑問符が付けられることがあります。

「適切な企業研究ができていなかった」「必要なアクションを起こせなかった」といったマイナスの評価がなされる傾向にあります。

働く意欲が低いのではないか

新卒採用を経て社会に出ることは、多くの学生にとっての「社会人としての意欲の現れ」と捉えられます。

新卒採用を経なかった既卒者に対しては「真剣に働く意欲があるのか？」という疑問が浮上します。

特に、学生時代に就職活動をせずに時が過ぎた既卒者に対しては、疑問が強まり採用の障壁となってしまうのです。

既卒が人生終了と言われてしまう理由

既卒者が直面する就職活動の困難さは、多くの人にとって深刻な悩みとなっています。

既卒は人生終了という過度な言葉まで飛び交っている現状に、何が影響しているのでしょうか。

以下では、背後にある主要な理由を詳しく検証します。

新卒と比べてエントリーできる企業が少ない

多くの企業が新卒採用を重視している中、既卒者が直面する最大のハードルは応募先の制約です。

新卒採用の機会は一度きりとなってしまうため、次のステップとして選べる企業が限られてしまいます。

大手企業や注目の業界には既卒者向けの採用枠が少ない、あるいは存在しないケースも少なくありません。

空白期間が長くなるほど企業から懸念を持たれる

学生から社会人への移行期間に何らかの事情で就業を遅らせたり休業したりすることは、後の就職活動において大きなデメリットとなることがあります。

企業側から見たときに、既卒者の空白期間が「働く意志の欠如」と受け取られる可能性がああります。

しかし、既卒者の空白には多様な背景があり、適切に伝えることで誤解を避けることも可能です。

スキルが身に付かないので市場価値が上がらない

年齢とともに市場価値はスキルや経験に大きく依存するようになります。

若いうちに得られる「新卒としてのポテンシャル」という強みが薄れてくると、具体的なスキルや経験を求められるようになります。

既卒者が持つ市場価値を高めるためには能力を磨き、経験を積むことが不可欠です。

企業から見た既卒の印象

既卒者という印象の悪いのステータスが採用担当者の中でどのような評価を受けているのでしょうか。

実際のところ企業側には既卒者への様々な期待や懸念が存在します。

ここでは、企業が既卒者に対してどのような印象を抱くのか、背景や理由を探ります。

ネガティブな事情がありそう

既卒者というレッテルが企業の懸念を生むケースがあります。

「なぜ新卒時に採用されなかったのか？」という疑問から、ネガティブな事情や問題を想像することもあります。

特に内定取り消しや就活中断など、学生時代の選考プロセスでの経緯が気になる企業も少なくありません。

しかし、様々な人生の選択や困難がある中で、困難を乗り越える強さや経験を積んできた既卒者もいるため一概にネガティブに捉えることは控えるべきでしょう。

経験がない分伸びしろに期待できそう

社会人としての未経験や浅いキャリアが、柔軟性や学習意欲の高さとして評価されることもあります。

未来の可能性を秘めた既卒者に対して企業は既卒者の成長や伸びしろを楽しみにしています。

独自に持っている経験や考え方を武器にし企業の風土や業務内容にすぐに適応しようとする意欲的な姿勢は、多くの採用担当者から好意的に受け止められます。

既卒即人生終了パターンもある！

既卒というラベルが就職活動に影を落とすことがある中、特に採用担当者から敬遠される“NGな既卒”の例が存在します。

NGな例を知り、避けることで既卒でも確実に良い就職先を見つける手助けとなります。

では、どのような既卒がNGとされるのでしょうか。

次に詳しく見ていきましょう。

現状に甘えて働く意欲が低い

既卒者の中には家族のサポートを受けていることから働く意欲が湧かない人もいます。

しかし、家族の支援は永遠に続くわけではなく、現状に安住することは大きなリスクとなるでしょう。

働く意欲を持ち独立した生活を目指す姿勢は、将来の自分を守る重要なステップです。

長く働かない期間が続けば市場価値は自然と下がります。

早めの行動が肝心です。

大手や有名企業しかエントリーしない

有名企業への就職は多くの人の夢ですが、既卒者が有名企業を目指すのはリスクが伴います。

特に大手企業の採用は競争率が高いため、内定を得るのは困難です。

中小企業やベンチャーには未知の可能性や魅力が多く、中小企業やベンチャー企業を選考の選択肢に加えることでより幅広い道が開けるでしょう。

誰にも相談しないで1人で就活を進める

既卒者は特有の悩みを抱えやすく結果として孤立してしまうことがあります。

しかし、孤立は情報の取得を阻害し、精神的なストレスの原因ともなります。

友人・専門家・サポート機関など外部の意見や情報を取り入れることは、効果的な就職活動の鍵となるでしょう。

就活を先延ばしにして行動を起こさない

既卒での期間が長くなるほど行動の遅れは大きなデメリットとなります。

市場価値の低下や自身のスキルの停滞は、将来の生計にも影を投げかけるリスクを持ちます。

就職活動は早めに始め、積極的に行動することが成功への近道です。

就職活動の一歩が踏み出せないなら、小さなアクションから始めることをおすすめします。

既卒が人生を逆転させる就職活動のポイント

既卒者が理想の企業に内定を勝ち取るには、独自の戦略が必要です。

新卒時とは異なる状況の中での就職活動は特有の課題を持ちますが、乗り越えた先には多くの可能性が広がっています。

ここでは、既卒者が人生を逆転させるための7つのコツを中心に効果的な就職活動のポイントを解説します。

既卒者ならではの強みや特性を活かし、次なるステージへと進むためのヒントを伝えます。

早めに行動を起こす

既卒者の就職活動では早期に行動を開始することが成功の鍵となります。

時間が経過すると空白期間の長さが企業からのマイナス評価となるリスクが高まるため、手をこまねいている場合ではありません。

具体的な行動としてはキャリアセンターや求人情報サイトの早期エントリー、キャリアアドバイザーとの面談を始めるなどが挙げられます。

自己分析は入念におこなう

既卒者は新卒の際の就職活動での失敗や課題を振り返り、自己分析を深めることが必要です。

自分の強み・短所・適性・興味・関心、目指すキャリア像を明確にし、自己分析を元にアピールポイントや志望理由を練り上げる作業が求められます。

他己分析を取り入れて周りの人の意見も反映させることで、より客観的な自己分析を目指しましょう。

毎日ナビサイトを見る習慣をつくる

既卒者向けの求人は年間を通して更新されますが、特に活動が活発になる時期もあるため日常的に情報をチェックする習慣を持つことが重要です。

情報チェック習慣を持つことで新たに公開される求人を見逃すことなく、自分の希望と合致する企業を迅速にキャッチすることができます。

新卒で就職しなかった理由を言語化する

面接では「なぜ新卒での就職に至らなかったのか」という質問に答える必要があるため、理由を明確に言語化しておくことが不可欠です。

留学・家庭の事情・自分の適性や興味の変化など、何らかの理由で就職を先延ばしにした背景を率直に伝え、就職を裂き伸ばした背景を通して成長や気づきがあったのかをアピールすることで面接官に自分の経歴を正確に理解してもらいましょう。

空白期間に何をしていたかを言語化する

既卒としての就活では学卒後の「空白期間」が採用担当者の注目ポイントとなることが多いです。

特定の目的なく働いていた場合でも経験も有意義に伝えることが重要です。

フリーターであったとしても顧客との接点があったり、社会の一部としての役割を果たしていたはずです。

空白期間の経験で得たこと、感じたことを伝え、次の仕事に生かせるのかを明確に伝えることが求められます。

既卒に特化したエージェントに相談する

就活を一人で進めるのは困難なこともあります。

既卒に特化した転職エージェントの利用は強力なサポートとなり得ます。

転職エージェントは企業の紹介だけでなく履歴書の添削・自己分析・面接練習などのサポートを行います。

特に、既卒者は求人探しや書類選考での困難があるため、プロのサポートを受けることで選考の成功率を向上させることができます。

就活と並行して資格やスキルを身に付ける

既卒者としての強みを増やすためには、資格やスキルの取得が効果的です。

TOEICや簿記、ITパスポートなどは多くの企業で評価される資格です。

資格取得の努力や、資格取得を通じて得た知識やスキルをアピールすることで採用担当者に前向きな印象を与えることができます。

人材不足の業界・職種・企業を狙う

志望の業界や職種が定まっていない場合、人材が不足している分野を狙うのも一つの方法です。

IT・福祉・建設業界などでは経験よりも人物重視の採用が増えています。

ただし、業界の状況や企業の背景をよく調べて長期的なキャリア形成を意識した選択が必要です。

面接時の質問にはポジティブに回答する

既卒者としての面接では過去の経歴や既卒になった理由に関する質問が避けられません。

質問の際、過去の経験を後悔や負の感情で語るのではなく、どのような学びや気づきがあったのかをポジティブに伝えることが重要です。

自分の成長や前向きな意欲をアピールすることで採用担当者に良い印象を与えることができます。

既卒就活でも自信が持てる理由がある！

既卒というレッテルに落ち込む必要はありません。

既卒者の就職環境は大きく変わってきており、多くのチャンスが広がっています。

既卒という一歩遅れたスタートが大きなアセットに変わる可能性もあるのです。

既卒者を積極的に採用する企業が増えている

既卒というレッテルは自分のキャリアに大きな影を落とすと感じるかもしれません。

しかし、現代のビジネス風土は変わりつつあります。

2010年の「青少年雇用機会確保指針」の導入以降、多くの企業が既卒者を新卒採用枠で採用する方針を採用しています。

厚生労働省の調査によれば、新卒枠での既卒者採用が全体の68%を占めていると言われています。

企業の既卒に対する認識や姿勢が変わりつつある明確な証拠です。

国が「3年以内は新卒枠」を推奨している

政府も既卒者の採用促進を積極的にサポートしています。

「青少年雇用機会確保指針」に続いて、「特定求職者雇用開発助成金（三年以内既卒者等採用定着コース）」という制度が設けられました。

特定求職者雇用開発助成金（三年以内既卒者等採用定着コース）は、新卒採用枠で既卒者を採用した企業に対して奨励金を提供するものです。

特定求職者雇用開発助成金により、多くの企業が人材確保の一環として既卒者の採用を見直すようになりました。

人手不足が続く中、多様なバックグラウンドを持つ既卒者は企業の新たな資源としての価値が高まっています。

既卒でもいい！学生必見就職活動に見切りをつけるポイント

新卒のタイミングで就職活動を行うことが一般的ですが、新卒採用に固執する必要はありません。

もちろん、既卒の就職活動は特有の課題が存在しますが、新卒採用を目指さない選択が正しいものであるかどうかを見極めるポイントを紹介します。

ネガティブな理由で就職活動終了しない

既卒の道を選ぶ際、動機は重要です。

企業は新卒のタイミングで就職活動しなかった理由を問うでしょう。

言い換えれば、動機が不明確だったり消極的な理由での就活中断は好印象を得るのが難しいのです。

「求める職がなかった」とか「就活自体に興味がない」という理由は慎重な対応が求められます。

明確な目標や理由がある場合には、目標や理由を伝えることで理解を求めることができます。

最終的にプラスになる選択肢なら問題ない

既卒での就活を選択する理由は最終的に自分にとってプラスになるものであるべきです。

「希望の業界に転職するためのスキルを習得する」や「公務員試験の再挑戦」など、将来的に見てプラスとなる目的が明確であれば企業も理解しやすくなります。

しかし、単に「就活を避けたい」といった短絡的な理由は、後々の活動で問題となる可能性が高いので注意が必要です。

1人で決めない

既卒での就活は独自の課題や困難が伴います。

そのため、1人での判断は避け、多角的な意見を取り入れるべきです。

身近な人・キャリアセンター・専門家など、多くの人の意見やアドバイスを参考にし、より良い判断を下してください。

特に、自分の状況や思いを理解してくれる第三者の意見は非常に貴重です。

既卒という選択をする前にじっくりと考え、確かな決断をすることが大切です。

既卒即人生終了じゃない！メリットとデメリットを比べて最終的にプラスになる選択をしよう

新卒の就職が一般的とされる中で、既卒の道を選ぶことは容易な判断ではありません。

しかし、「既卒＝不利」という固定観念はもはや過去のものです。

企業は経験豊富な既卒者を高く評価しています。

経験を通じて磨かれたスキルや考え方は新卒者が持ち得ない強みとしてアピールできるのです。

逆に、既卒のレッテルによる社会的なプレッシャーも無視はできませんが、個人の成長や意識によって克服可能です。

最終的には既卒と言うラベリングを超え、自分の実力や経験を活かして最適な職を見つけることが肝要です。

既卒という選択は確実に新たなキャリアの扉を開く一歩となるでしょう。