薬剤師に限らず、転職において「志望動機」は、必ず問われる重要なものです。
売り手市場が長らく続いた薬剤師の世界では、「志望動機なんて無難なことを書けば大丈夫」と言われるかもしれません。
しかし、医療費削減が続くだけでなく、新卒薬剤師が毎年1万人近く市場に出てきている今日では、転職の難易度は確実に上がってきています。
人気がある求人は高倍率となることも多く、志望動機が採用の合否を分けることも増えています。
そこでここでは、薬剤師転職における志望動機の書き方を、徹底解説していきます。
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志望動機を書くときの4つの構成要素
志望動機を書く時には、次の4つの構成要素に沿って書くようにしなくてはなりません。
- 志望したきっかけ・理由
- 志望先でなにをやりたいか
- 志望先で生かすことのできるスキル・経験
- 締めの言葉
これらの4つをしっかりと盛り込むことで、自分の気持ちや意欲が、求人先に伝わりやすくなります。
それぞれの内容について、順にご説明していきます。
1.志望したきっかけ・理由
まずは、「なぜこの求人を志望したのか」、「なぜこの職場でなくてはならないのか」ということを書きましょう。
ここで重要なのは、「論理的に書く」ということです。
後半の「やりたいこと」や「生かすことのできるスキル」まで含めて、つじつまが合うように組み立てましょう。
コツとしては、志望する職場に特徴的なものについて触れること。
「この職場でなくてはならないということ」の根拠となり、職場のことを理解していることをアピールすることができるので、非常におススメの方法です。
【例】
『地域の薬剤師会の勉強会に参加する中で、在宅医療に携わりたいと考え、長い間地元の在宅医療の中核を担っている御社で働きたいと考えるようになりました。』
『往診同行や学会発表を積極的に行っている御社の取り組みを知り、これまでMRとして培ってきたコミュニケーションスキルやプレゼンスキルを生かせると考えました。』
2.志望先でなにをやりたいか
次に、「志望先で自分が薬剤師としてなにをやりたいのか」ということを書きましょう。
与えられた仕事をこなすことはもちろんですが、「薬剤師として○○をしたい!」という強い想いを持って働いている方は、職場においてまわりに良い影響を与えます。
仕事に対する熱意や意気込みが伝わるように、しっかりとアピールをしましょう。
【例】
『在宅医療で手助けを必要としている患者様に寄り添い、悩みや不安を解決したいと考えています。お薬を届けるだけでなく、家族と一緒に喜びや苦しみを分かち合って、最後の「看取り」まで責任をもって職務を全うしたいと考えています。』
『治療が必要な患者様だけでなく、予防の段階から専門家として積極的にアドバイスをして、OTC医薬品の販売に貢献していきたいと考えています。』
3.志望先で生かすことのできるスキル・経験
志望先で生かすことができるスキルがあれば、ぜひ書くようにしましょう。
学生時代やアルバイトで身に着けた、薬剤師以外のスキルでもOKです。
特に思いつかない場合は、コミュニケーションスキルについて書くことがおススメです。
まわりのスタッフや患者様など、コミュニケーションを積極的に取れることは、医療従事者としては非常に重要です。
【例】
『HIV治療において薬剤師が高い職能を発揮している貴院の取り組みを知り、HIV感染症専門薬剤師の資格を生かせると考えて志望しました。』
『学生時代にテニス部で部長を任せてもらい、多くの人とコミュニケーションをとることの大切さを知ることが出来ました。当時の経験を生かして、薬局でもまわりを笑顔にしていけるように取り組みたいと考えます。』
4.締めの言葉
最後に、締めの言葉として採用後の意気込みや決意を書きましょう。
ポジティブな印象を持ってもらうことが重要です。
仕事への熱意や今後の目標を書いてもOKです。
【例】
『患者様から頼りにされる、「なじみの薬剤師さん」を目指して頑張ります。』
『未経験の業種ですが、一日も早く活躍できるように、日々努力したいと考えています。』
志望動機を書く時のポイント
実際に志望動機を書いていくにあたって、重要なポイントをご紹介していきます。
自分の中で志望動機を整理する
志望動機がうまく書けない方は、「自分でも志望動機がよくわかっていない」というケースがほとんどです。
まずは、自分の中でしっかりと整理をするようにしましょう。
自分でいろいろと探してたどりついた職場であれば、志望動機も明らかですが、「コンサルタントに紹介された」、「友人におススメされた」、「大手だから」といった理由では、志望動機を書く時につまずいてしまいがちです。
「年収が高いから」、「家から近いから」という理由で志望する場合においても、志望動機として書くには適切でないので、つまずいてしまうことでしょう。
そんな時は、「薬剤師として自分がやりたいことは何なのか」ということを、振り返りましょう。
その上で志望先の魅力を再確認して、志望動機を考えることがおススメです。
経歴やスキル、経験、長所、短所を具体的にまとめる
経歴やスキルなどは志望動機に盛り込むだけでなく、自己PRや面接の質問でも問われることのある内容です。
相手にわかりやすいように、具体的にまとめることが重要です。
自分のこれまでの経歴や所持しているスキルを洗い出して、それらがどのようにして新しい職場に貢献していけるのかを考えましょう。
また、長所や短所など、自身の性格を見つめ直すことも、志望動機を書くためには重要です。
長所を生かし、短所を補うことで、職場に貢献していきましょう。
内容は論理的かつ具体的に、根拠を添えて
志望動機を書くときに重要なのは、「論理的」であることです。
「○○だから△△と考えました。なので□□に挑戦したいです。」と、誰が見ても納得できるような志望動機をつくりましょう。
その時に注意すべきポイントは、「内容は具体的にする」ということ、さらに「根拠をしっかりと明示する」ということです。
実際に体験したことなど、具体例を交えることが出来れば、共感してもらいやすくなります。
転職をするきっかけとなったエピソードや、志望したいきさつを盛り込むことで、わかりやすい志望動機をつくることができます。
志望動機としてNGなものは?
志望動機は正直に書くことが一番ですが、中には事実であっても、志望動機としてふさわしくない内容もあります。
ここではNGとされる内容について、ご説明していきます。
自分の都合による志望動機(自分の成長、給与、通勤時間など)
「御社で成長していきたい」、「○○を経験したい」という志望動機は、一見するとスマートな言いまわしです。
しかし、職場は従業員を成長させるための場所ではありません。
受け手によっては、自分勝手ととらえられることもあるので、避ける方が無難です。
また、給与や通勤時間を理由に転職する方は多いですが、実際にこれらを表に出してしまうと、自分勝手な人柄だと思われてしまいます。
こちらについても、志望動機には書かないようにしましょう。
具体性のない内容
「御社の理念に共感した」というような具体性のない内容も、志望動機としてはNGです。
「御社の○○という理念が私の△△という考えと一致して、共感を覚えた」と、具体的に書くようにしましょう。
また、「患者様の役に立ちたい」や「医療に貢献したい」という理由も、医療従事者としては当たり前のことで、漠然としているので不適切です。
こちらも、「○○で悩む患者様に、△△を活用して役立ちたい」と、具体例に書くようにしましょう。
ネガティブな内容
たとえ事実であったとしても、「前職の○○が嫌だった」、「○○ができなかったから転職を考えた」というようなネガティブな志望動機は避けるようにしましょう。
多くの職場では、前向きでポジティブな人柄が求められています。
前向きな志望動機を書くようにしましょう。
「○○が嫌だ」、「○○ができない」という理由であれば、「こんな会社で働きたい」、「こんな仕事をしたい」という前向きな理由に言い換えることで、受け手にとっても前向きな印象を与えることができるのです。
志望動機の具体例5選
ここでは、パターン別に薬剤師転職における、志望動機の具体例をご紹介していきます。
経営理念・企業理念との合致
『私は以前からへき地医療に興味を持っており、御社の「すべての患者様に平等な医療を提供する」という考えに共感を覚えました。御社が現在注力している在宅業務は、私が薬剤師として最も挑戦したいことであり、これまでに培ってきた経験を生かしていけると考えています。前職のドラッグストアでは処方箋調剤のみならず、OTCや介護用品を積極的に取り扱っていたので、これらを在宅の現場で提案していくことで、患者様のQOLに貢献していけると考えています。』
スキルアップをしたい
『これまで働いていた調剤薬局では、様々な領域を学ばせていただき、薬剤師として大きく成長することが出来ました。しかし、日々の業務の中で処方箋をお持ちでない患者様から健康相談を受けることも多く、OTCの知識を身に着けなくてはならないと考えるようになりました。ドラッグストアへの転職活動の中で、プライベート商品を豊富に持つ御社の説明会を聞き、共感を受けたので志望いたしました。提案力のある薬剤師を目指したいと考えています。』
かねてからの夢を叶えたい(他職種への転職)
『小さいころから薬剤師として患者様に携わりたいと考えていましたが、薬学部時代のインターンでMR職に興味を持ち、製薬会社に就職しました。医薬品の普及のために働いてきましたが、かねてからの夢が捨てきれず、調剤薬局への転職を決意しました。なかでも、患者様とのコミュニケーションを大切にしている御社では、MRで培ったコミュニケーション能力を生かすことができると考えて志望しました。患者様に会いに来てもらえるような「なじみの薬剤師さん」を目指して、頑張りたいと考えています。』
急性期の治療の段階から患者様に携わりたい(病院への転職)
『調剤薬局で働いていくなかで、地域の薬薬連携で、病院の薬剤師さんと仕事をする機会がありました。その中でさまざまなお話を聞き、急性期の治療の段階から患者様に携わりたいと考えるようになりました。病院薬剤師として、病棟業務などで患者様のQOLを向上させるために職能を発揮したいと考えています。特に薬薬連携に力を入れている貴病院においては、これまで薬局薬剤師として培ってきたスキルを生かせると考えて、志望いたしました。患者様に頼られる医療従事者となれるように、精一杯頑張りたいと考えています。』
薬剤師の資格を生かして医薬品の普及に携わりたい(MRへの転職)
『日々の薬剤師業務の中で、MRさんの訪問活動や講演会での取り組みを見ていて、医薬品の普及に携わることの素晴らしさを感じました。また、様々な職種の方と携わることにも興味があり、MRという仕事に挑戦したいと考えるようになりました。さまざまな製薬会社の説明会に参加する中で、婦人科に強みのある御社は、これまでの知識を生かせると考えて志望いたしました。臨床で培った経験を生かして、医師や薬剤師といったコメディカルに医薬品を普及していきたいと考えています。』
まとめ
POINT
- 志望動機を書くためには、4つのポイントを押さえよう
- 自分の中で志望動機や経験・スキルを整理することが重要
- 具体的な内容で、根拠を明示するように
- 自分の都合による志望理由やネガティブな内容はNG
薬剤師は書類選考で落選することは少なく、志望動機は何でもよいと考える方も少なくはありません。
しかし、受け手の企業の立場に立って考えると、しっかりとした志望動機のある方を採用したいと考えることは、当然のことです。
人気のある求人では競争となる場合もあり、書類の完成度が合否を分けることもあるのです。
少しでも内定の確立を上げるために、本稿を参考にして良い志望動機を作り上げてください。