建設業は「きつい」「休みが少ない」などのマイナスイメージが課題となっています。

従業員を増やそうと思っても人が来ない、求人広告を出しているのに人手不足だ、と悩む企業は少なくありません。

今回は建設業で人材確保する方法を、人手不足の原因とともに解説します。

建設業は人材確保が難しい理由と課題

建設業は人材確保が難しい理由と、人材確保に向けてどんなことが課題になっているのかをご紹介します。

建設業は高齢化が深刻

まず、思うように人材確保が進まない原因として、建設業は高齢化が深刻だという要因があります。

厚生労働省によると、「建設業の技能者のうち、60歳以上の割合は約4分の1」「29歳以下は全体の約12％」です。

企業が「これから何十年も長く働いてくれる若い人材を育成したい」と思っても、なかなか若い人材を確保するのが難しい状況となっています。

これは建設業全体の課題です。

出典：厚生労働省『建設業の人材確保・育成に向けた取組を進めていきます～厚生労働省・国土交通省の令和６年度予算概算要求の概要～』

3Kのマイナスイメージがある

建設業界における人材確保の難しさには、「3K」のマイナスイメージが大きく影響しています。

この3Kとは「きつい」「きたない」「危険」の頭文字を取ったもので、特に若い世代にとって魅力的な職場とは見られにくいです。

また、建設業界でのキャリアパスが不明確であると感じる若者も多く、長期的な職業としての魅力を感じにくくなっています。

休日日数が少ない

建設業の人材確保が難しい原因として、休日日数の少なさが挙げられます。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、建設業の2022年度の年間出勤日数は240日でした。

一方、調査対象の産業全体では、年間で211日しか出勤していません。

つまり建設業の年間出勤日数は、他の産業と比較して29日多いです。

同調査の過去の結果を振り返ってみても、建設業の出勤日数は、他の産業より多い状態が続いています。

参考：厚生労働省「毎月勤労統計調査」

労働時間が長い

労働時間が長い点も、建設業の人材確保が難しい理由のひとつです。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、調査対象の産業全体の年間労働時間は平均約1,718時間ですが、建設業は1,986時間です（2022年の調査結果）。

建設業に従事する労働者は、他の業界の労働者と比較して、約270時間も長く働いていることがわかります。

同調査の過去の結果を振り返ってみても、やはり建設業の年間労働時間は、産業全体の平均値より高いです。

※調査対象…30人以上の常用労働者を雇用する事業所
※年間労働時間…年平均月間値×12で算出

参考： 厚生労働省「毎月勤労統計調査」

建設業で人材確保する方法

「建設業はきついし休みも少ないから、人が来ないのは当たり前」「うちの会社にいい人材が来ないのは仕方ない」と諦める必要はありません。

中小零細企業でも、インターネットを活用する、週休2日制を導入するなどして、応募者を効率的に集めている企業は存在します。

建設業で人材確保を進めるためのアイディアを見ていきましょう。

他社と自社の労働条件を比較して改善する

建設業界における労働条件の改善は、人材の確保と定着に不可欠です。

特に、同じエリアの企業と比較して休みが少ない、給料が低いなどの労働条件で負けていると、思うように人材確保が進みません。

他社と自社の労働条件を比較するために市場調査を実施したうえで、次の点に注意して、労働条件を改善することを検討してみましょう。

若手の待遇アップを検討する

若手社員の待遇をアップすることで、モチベーションの向上を図ります。

また、昇給や昇進の可能性といった、キャリアパスを明確化することも大切です。

若手社員の長期的なキャリア形成をサポートし、「このままこの会社で働き続けていても、給料が上がらないのではないか」と不安を抱かせないように意識しましょう。

実務能力向上のための教育や研修を提供し、若手社員のスキルアップを支援することも有効です。

週休2日制を導入する

週休2日制が導入されている会社は、特に若い世代にとって魅力的です。

Z世代は特にワークライフバランスを重視する傾向があるため、休日が少なく労働時間が長いという建設業のマイナスイメージを払拭できれば、人は集まりやすくなります。

週休2日制の導入は、採用活動において競争力が高まるだけではなく、現在働いている社員のモチベーションや生産性の向上にもつながるので、前向きに検討してみましょう。

資格取得支援制度を設ける

建設業は専門性が高い職種も多く、「資格を保有している人材が欲しい」と考える採用担当者も少なくありません。

そこで検討したいのが、資格取得支援制度の導入です。

従業員は軽い経済的負担で資格を取得できるようになるので、資格取得のモチベーションを抱きやすくなります。

社員のスキルアップを促進し、業務の質を向上させることや、キャリアアップの機会を提供してくれた企業への帰属意識を高めることにもつながります。

求人広告の内容を見直す

インターネットに求人広告を出しているのに、いい人材から応募が来ないという場合は、求人広告の内容を見直しましょう。

求人広告を作成するときのポイントは、次の通りです。

特に、実際の職場の雰囲気をイメージしやすくすること、どんな仕事をすることになるのか具体的にわかることは重要です。

求人広告の媒体を変える

建設業で人材を確保する方法として、必要に応じて求人広告の媒体を変えることも重要です。

ハローワークをはじめとした無料の求人広告媒体だけ使っている場合は、有料の求人広告媒体の利用も検討しましょう。

doda、リクナビNEXTなどの求人の数が多い転職サイトには、多くの転職希望者が集まります。

新卒採用であればマイナビ、リクナビ、キャリタスなどが人気です。

求人数が1,000件以下のような、かなり小規模な転職サイトだと、見ている人が少なく応募が集まらない可能性があります。

建設業界に特化した求人広告媒体を使う方法もあります。

建設業界に特化した求人サイトには、建設業界に興味を持っている人や、建設業界経験者が集まっています。

SNSを活用する

建設業で人材確保する方法として、無料のSNSを活用することも押さえておきましょう。

企業のInstagramやX（旧Twitter）のアカウントを作成し、職場の雰囲気がわかる発信をします。

具体的には、作業の様子や事務所の中を、写真や動画で投稿してください。

自社に興味を持った求職者が、実際の職場環境を把握しやすくなります。

また、SNSの投稿でも求人を出すようにしましょう。

SNSでの発信は、特に若手を採用したい場合におすすめの方法です。

若手向けの企業説明会を開催する

若手向けの企業説明会も積極的に開催することをおすすめします。

特に新卒採用では、学生が学校から「就活では企業説明会に参加したほうがいい」と指導されていることも多いです。

企業説明会の開催は、若手と出会う大きなチャンスといえます。

建設業界や自社の魅力を知ってもらう機会を、豊富に設けましょう。

国の人材確保の取り組みを活用する

建設業の人材確保を促進するために、国土交通省と厚生労働省が、さまざまな支援施策を実施しています。

特に集目したいのが、建設業の人材確保の取り組みに対する助成金です。

助成金の種類をご紹介します。

助成金の活用方法がよくわからなくても、人材紹介会社や派遣会社がサポートしてくれる場合もあります。

詳しくは厚生労働省の「建設事業主等に対する助成金（旧建設労働者確保育成助成金）」を参考にしてください。

建設業に強い求人サイトおすすめ3選

建設業が人材確保するおもな方法は、求人媒体に広告を載せることです。

最近はインターネットの求人サイトを利用して転職活動・就職活動をおこなう求職者が多くなっています。

人材確保する際は、建設業に強い求人サイトの利用がおすすめです。

ここでは建設業に強い求人媒体おすすめ3選をご紹介します。

※2024年1月調査時点の求人数を掲載。

では、各求人サイトの特徴を詳しく見ていきましょう。

GATEN職

GATEN職は、建設業・土木・ガテン系といった、現場系のお仕事探しに特化した求人媒体です。

建職バンク

建職バンクは、建設業界に特化した転職・求人広告媒体です。

電気工事士、各種施工管理技士などの資格ごとに求人を絞り込めるようになっていて、経験者採用を希望する企業とは特に相性がいいです。

もちろん未経験者の採用を希望する場合でも利用できます。

また求人数も多く、2024年1月時点で11,329件の求人が掲載されています。

建設業界に特化した求人媒体を探している企業におすすめです。

doda

「doda」は求職者の間で抜群の人気を誇る転職サイトです。

テレビやWEBでCMをたくさん流していることもあり、広く認知されています。

dodaは求人広告を掲載する際に料金が発生するシステムです。

採用できても別途料金はかかりません。

転職エージェントサービスも同じdodaブランドで提供しているので、エージェントサービス登録者にも同時に求人を見てもらえます。

今まで異業種で働いてきた人にも自社を知ってもらいたい企業や、中途採用を希望する建設業の企業におすすめです。

建設業の人材確保方法に関するよくある質問

建設業の人材確保方法に関する、よくある質問に回答します。

建設業の担い手確保の課題は？

建設業の担い手確保の課題として、国土交通省は「中長期的な担い手の確保と育成（課題と検討の方向性）」の中で、次の点を挙げています。

優秀な人材に建設業を選択してもらうためには、あらゆる観点で他産業よりも魅力的な仕事の場を提供していく必要があると国土交通省はまとめています。

具体的には、安定した雇用、月給制の導入などです。

人への投資をおこない、建設業は「働きやすい職場」「成長を追求する産業」だと社会から認知されることで、選ばれる産業を目指さなければなりません。

参考：国土交通省「中長期的な担い手の確保と育成（課題と検討の方向性）」

建設業の人手不足は将来ますます深刻になる？

労働者の高齢化が深刻な建設業では、団塊世代が後期高齢者となる2025年には、約90万人の労働人口が不足すると考えられています。

建設業での人材確保の競争は、さらに激化していくと考えられているのです。

建設業の人材確保の方法は働きやすい職場作りが重要

建設業の人材確保の方法をご紹介してきました。

いくら採用活動で人を雇っても、働きやすい職場作りができていなければ、人材が定着しません。

慢性的な人手不足に陥らないためにも、働きやすい職場作りが重要です。

働きやすい職場環境を作るには、業務を効率化する必要があります。