「とび(鳶)職」という言葉を聞いて、建築現場で作業をする人をイメージする人は多いです。
しかし、具体的にどのような作業を担当するお仕事なのか、今いちピンとこない人も中にはいる事でしょう。
この記事では、「現場の華」と呼ばれることもある「とび職」というお仕事について、仕事内容や1日の流れを、求められるスキルなども交えながら詳しく解説します。
とび職に興味のある人は、ぜひ最後まで読んでみてください!
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ズバリ「とび職」とは??
建築現場を通りかかった時、屋根や足場などの高いところで、ヘルメットにダボダボのズボン(ニッカポッカ)姿で作業をしている人をみかけたことはありませんか?
とび職とは、彼らのように建築現場の作業の中でも「高所での作業を専門に行う職人」の事です。
とび職の「とび」とは「鳶」と書き、梁から梁に飛び回る事から「とび」と呼ばれるようになったとも、鳥の「鳶(とんび)」に由来しているとも言われています。
飛鳥時代の文献にはすでに現在のとび職にあたるお仕事の記述がみられるなど、とび職の歴史は非常に古く、建築現場では時に「とびに始まりとびに終わる」、「現場の華」などとも言われるほどとても重要なお仕事です。
とび職にも種類がある
そんなとび職ですが、大まかには次に挙げるようにわけられます。
- 足場とび
- 重量とび
- 鉄骨とび
おなじ「とび職」という括りですが、仕事内容にはそれぞれ特徴があります。
上から順番に見ていきましょう!
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足場とび
「足場とび」とは建築現場で高所の作業が必要になった際に、それらの作業をスムーズに行えるように足場を組む人たちのことです。
建築現場で働く職人たちは、足場とびが組み上げた足場を頼りに作業をするため、足場とびのお仕事は、現場で働く人の作業全てに直結する非常に重要なお仕事と言えます。
加えて建築の現場だけではなく、解体工事の現場でも足場が欠かせないため、活躍する場が非常に広いのも特徴です。
また、足場とびの仕事は足場を組み上げるだけではありません。
足場の設計や解体も足場とびの重要なお仕事です。
足場を組む方法も「くさび式足場」、「単管式足場」なと様々な種類があり、その中から建築物の構造や工期、組み立てや解体のしやすさなど、あらゆる要素を考慮しながら最適な足場を組み上げます。
重量とび
続いては「重量とび」についてみてみましょう
「重量とび」とは、工作機械や大型の空調設備、電気設備などを建築現場に運搬・設置するお仕事の事です。
「重量とび」と言われるだけあり、扱うものの重さは数百キロから、時には100トンを超えるものもあり、非常に高度な技術が要求されます。
こうした重量物であっても、搬入や設置はミリ単位の調整を行うため、細心の注意が必要です。
また、搬入や設置だけではなく解体もあわせて行います。
万が一巨大な重量物が建築物に接触してしまった場合、建築物が大きく破損してしまう恐れもあるため、常に気を張って仕事に臨まなければなりません。
鉄骨とび
つづいて解説する「鉄骨とび」は、建物の梁や柱などに使われる鉄製の資材、「鉄骨」を主に扱うお仕事です。
鉄骨とびのお仕事は、地上で鉄骨にワイヤーなどを固定し、高所にクレーンでつりあげる「下回り」と呼ばれる作業と、クレーンで運ばれた鉄骨を高所で設置したり・組み立てたりする「取り付け」と呼ばれる作業の2種類があります。
下回りの作業では、様々な重さや長さの鉄骨に対し、どの部分にワイヤーをとりつけるか、どの太さのワイヤーを使用するか、など、それぞれの鉄骨の性質に合わせた取り付けを行います。
もし不適切な取り付けをしてしまった場合、クレーンで釣りあげている途中に鉄骨が落下してしまう恐れがあるため、絶対に気の抜けない作業です。
一方取り付けの作業は、非常に重い鉄骨を強風にあおられる高所で取り付けるため、少しでも油断すると大きな事故につながる大変危険の伴う作業です。
下回り、取り付け共に、熟練の技術が要求されます。
とび職の1日の流れとは??
では次に、そんなとび職の一般的な1日の流れをみてみましょう。
午前8時:作業開始
午前10時: 小休止
午前12時: お昼休み
午後1時:作業再開
午後2時〜3時:小休止
午後4時〜5時:その日の作業をやめ、清掃などを行ってから現地解散
このように、多くの場合とび職は直行直帰が基本となります。
また、暗くなってからの作業は非常に危険なため、残業が発生することも少ないです。
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とび職に求められる要素やスキル4選
とび職として活躍するためには、どのような能力が必要なのでしょうか?
専門的な技術が必要なとび職ですが、技術だけではつとまりません。
以下にとび職として特に大切な要素を4つ挙げました。
- 体力や腕力
- 安全に対する高い意識
- チームワーク力
- 早起きが得意
順番に詳しく解説していきます!
建築業界に向いている人とは?建築業界でもとめられるスキルや仕事内容
①体力や筋力
まず第一に、体力や筋力といったフィジカルの強さが求められます。
とび職は重量物を扱ったり、炎天下や寒空の下で作業を行ったりと、非常に体を酷使します。
そのため、体力に自信がないと作業についてゆけず、現場での活躍は期待できないのです。
下に解説するように、とび職に要求されるものは体力だけではありませんが、フィジカルの強化は特に難しいものの一つです。
したがって、昔からスポーツや格闘技などを続けていて、すでに体力や筋力に自信のある人であれば、今後の活躍も期待できるでしょう。
②安全に対する高い意識
体力と並んで必要不可欠なものは、「安全に対する高い意識」です。
いくら身体的な能力に自信があったとしても、作業のたびにケガをしていたのでは仕事になりませんよね。
そのうえとび職のお仕事は、かすり傷程度ではとてもすまないような、大きな危険性のあるものばかりです。
たとえば高所の足場作業の場合を考えてみましょう。
高所で安全対策に抜かりがあって万が一転落をしてしまった場合、骨折や最悪の場合死亡事故にもつながりかねませんよね。
したがってとび職は、体力と安全意識の2つがそろって初めて成り立つといえるのです。
③チームワーク力
どんなに熟練のとび職人であっても、一人で現場の作業をこなすことはできません。
とび職の現場はチームワーク力がものを言います。
仲間との息の合った連係プレイや、緊密なやりとりなど、仲間とワンチームで作業に当たれる絆意識が非常に重要なのです。
また過酷な作業現場では、仲間への気遣いや優しい声掛けなどもかかせません。
このようにとびの現場では、高いチームワーク力が必須の要素なのです。
④早起きが得意
とび職の朝は早いです。
特に足場とびの場合、足場が組みあがっていないと、大工さんや左官屋さんなど、現場で働く他の職人さんの仕事も遅れてしまうため、いち早く現場に赴いて足場を完成させなければいけません。
特に日没の早い冬期間は、少しでも作業時間を伸ばすために早めに作業を開始する場合もあります。
とび職の世界に入って、たとえ休日であっても朝になれば自然と目が覚める習慣が身につくほどです。
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とび職についてのあれこれ
では次に、とび職の収入や将来性といった、よりリアルな部分をみてみましょう。
以下の4つについて解説していきます。
- とび職の収入はどれくらい??
- とび職は激務ってホント??
- とび職の休日事情
- とび職の将来性
順番にみてみましょう。
とび職の収入はどれくらい??
まずは、気になるとび職の収入についてみてみましょう。
とび職をはじめ、建築現場でのお仕事は体力的に消耗が激しいために、一般的には高給であるとイメージされることが多いです。
しかし、実際には見習い期間中の職人とベテランの職人とでは、収入に大きな開きがあります。
そのため、給料をしっかり稼ぎたい場合には、見習い期間を耐え抜くことが大切です。
また、とび職の多くは日給月給制のため、悪天候などで作業がお休みになった日の分は収入が減ってしまう事もあります。
一般的には下の金額が相場と言えます。
中堅職人・・・10000〜12000円
親方クラス・・・12000〜18000円
厚生労働省が令和2年に発表した調査では、とび職の年収は411万円となっていますが、独立を果たした熟練の親方の中には、年収1000万円以上を稼ぎ足す人も!
技術や経験を積むごとに、収入のアップがみこめるお仕事と言えるでしょう。
とび職は激務ってホント??
体力や筋力が必要であったり、屋外での作業が多かったりと、とび職は激務というイメージを持つ人は多いです。
確かに、身体的な能力に自信のない人にとっては非常にキツイお仕事といえます。
また、厳しい職人の世界でもあるため、時には強く叱られたりする事もあるでしょう。
ただし、暗くなってからは作業ができないため、基本的には残業は発生しません。
加えて、1年を通じて仕事の量に大きな差が発生することも少ないため、体を動かすことが好きな人や身体的な能力に自信のある人であれば、激務と感じる事も少ないです。
しかし次で挙げるように、基本的には日・祝日休みのため、週6日勤務が多い点は非常に辛いといえます。
とび職の休日事情
続いてはとび職の休日事情です。
とび職のお休みは、先ほど触れた通り日曜日と祝日に設定されている場合が多いですが、労働環境改善のために、最近では土日休みに設定している職場も増えてきました。
加えて、ゴールデンウイークやお盆休み、年末年始休みなどの長いお休みはしっかりとれます。
というのも、医療機関がお休みの時に作業をしてしまうと、万が一ケガ発生した場合に対応しづらいからです。
また安全を考慮して、台風や大雨などの悪天候の日も急遽お休みになる事が多いですが、そうした災害にそなえて、急遽足場を解体するために出勤する事もあります。
とび職の将来性
現在色々な業界でDX化やIT化が進んでおり、将来的には現在ある様々なお仕事がロボットやコンピューターに取って代わられる事が予想されています。
建築業界でも業界全体でDX化を促進することが推奨されており、事務職や人事職ではITの技術を応用している企業もあります。
しかし、とび職のお仕事はロボットやコンピューターが行える仕事ではありません。
そのため、今後機械化がより浸透していく中にあっても、とび職がなくなってしまう事はないでしょう。
ただし、体を激しく酷使するお仕事であるため、定年まで現役バリバリで作業を行える人はすくなく、40代後半や50代にさしかかると、とび職からの引退を考える人も多いです。
とび職になるにはどうすればいい??
とび職になる上では、学歴や経歴が重視されることはほとんどありません。
未経験者がとび職に挑戦する上で大切なのは、体力やコミュニケーション能力、チームワーク力なのです。
加えて、現在建築業界は深刻な人手不足に悩まされており、とび職の需要も非常に高まっています。
そのため、とび職を募集している求人広告に応募し、採用されればすぐにとび職として働けます。
ただし、就職後は様々な資格を取得する必要があるため、次に解説する資格の中から、可能なものをあらかじめ取得しておくと、よりスムーズに仕事を覚えられるでしょう。
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とび職の現場で役立つ資格4選
とび職の現場では様々な専門的な資格が活躍します。
就職後に取得を義務付けられるものも多いです。
ここではそんなとび職の現場で役立つ資格を紹介します。
建築業界の今後の流れと現状について〜課題や取り組みなども解説〜
①玉掛け
とび職のお仕事をする上で必ず持っておきたい資格が、「玉掛け」です。
多くの場面で玉掛けの技術を用いるために、就職後に会社から取得を命じられるでしょう。
玉掛けとはクレーンで資材や重量物を上げる際に、ワイヤーやロープを資材に括りつけたり、あるいは外したりする技術の事です。
とび職の現場では非常に基礎的かつ重要な技術の一つなので、就職前に資格を取得しておくとよりよいでしょう。
②とび技能士
とび技能士とは、とび職としての技術や知識があることを公式に証明する国家資格の一つです。
3級、2級、1級とレベル分けされており、3級に関しては受験資格が設定されていないため、あらかじめ取得しておくこともできます。
ただし2級と1級は、受験資格として一定の実務経験が設けられていることから、未経験者の取得はできません。
資格がある事で収入アップが狙えるので、取得を視野にいれてみましょう。
③建築物等の鉄骨組立て等作業主任者
鉄骨とびの世界で特に重要な資格が、「建築物等の鉄骨組立て等作業主任者」です。
高さが5m以上ある建築物の鉄骨の設置や解体現場には、この資格を持っている人を必ず配置しなければならないため、鉄骨とびでキャリアアップをしたい場合には必須の資格といえます。
鉄骨作業に従事した経験が3年以上ないと受験できないことも覚えておきましょう。
④足場の組立て等作業主任者
足場とびの現場で重要な資格が、こちらの「足場の組立て等作業主任者」です。
足場の解体や設置などを監督する立場になるためには必須の資格のため、足場とびの世界で活躍したい人は絶対に取得したい資格といえます。
3年以上の実務経験が必要なため、免除区分に該当しない限り未経験者が取得する事はできませんが、キャリアアップのためにぜひ持っておきたいところです。
鳶会社・建築企業の売上高ランキングTOP10〜業界の現状や課題も〜
まとめ〜ズバリ「とび職」とは??〜
この記事ではとび職に関する様々な情報を、年収などもあわせて詳しく解説してきました。
とび職は肉体を酷使するお仕事な上、大きな危険が伴ったり、高い技術が要求されたりと厳しい面もありますが、学歴や経歴を重視しない世界のため、チャレンジしやすいお仕事と言えます。
この記事を見てとび職に興味が出た人は、挑戦してみてくださいね!